鬼平犯科帳 第4シリーズ #17 さざ浪伝兵衛

 第4シリーズ #17 さざ浪伝兵衛

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 秋の夜、小田原城下でさざ波伝兵衛の捕り物が行われたが伝兵衛は逃げ砂堀の蟹蔵の家に隠れる。その頃鬼平小田原城下に入っていた。伝兵衛の女おだいが江戸を立ったのをつけてきていた。

 鬼平はおだいが泊まる宿屋から馬で旅立った男をつけるよう沢田に命じるが、酒井は巻かれてしまう。男は三次といい、伝兵衛の隠れ家に馬子の案内で行く。三次は伝兵衛の子分だった。

 鬼平は宿先でおだいが施しをしてやった男をつける。そしてその正体が役者小僧市之助だと突き止めるが、市之助は伝兵衛の居場所を番所にチクったのは自分だと言い、先月の江戸での伝兵衛のいそぎ働きの件も話す。

 伝兵衛は三次から市之助が小田原にいることを聞く。市之助とおだいは良い仲で、昨日の密告は市之助が仕組んだことだと見抜く。伝兵衛は市之助とおだいを斬るつもりだった。しかも鬼平に仲間を捕らえられた恨みで、鬼平の前で二人を殺すつもりだった。伝兵衛は蟹蔵に協力を求めるが、断られる。その夜蟹蔵は夢で昔斬った老女を見て暴れる。伝兵衛は蟹蔵に初めての仕事の話をし、自分の刀を預ける。蟹蔵は伝兵衛の殺しを手伝うと話す。

 蟹蔵は馬子に川に船を用意させる。その際馬子に自分の父親の仇を探して欲しいと頼まれる。話を聞くと蟹蔵はその仇が伝兵衛であることに気づく。

 茶店で茶を飲んでいた市之助は蟹蔵に見つかる。鬼平は馬子のことを調べ、政吉という名だとわかるが、彼には会えなかった。宿で待っていた盗賊改方はおだいへのつなぎの手紙を入手し、伝兵衛の居場所を突き止め、その場所へ向かう。しかしその頃宿では火事騒ぎがあり、おだいは逃げようとするが、宿にいた伝兵衛に捕まる。宿から手紙に書いてあった蟹蔵の家に行った酒井たちは、そこで市之助の死体と伝兵衛から鬼平への手紙を見つける。また宿でもおだいの死体が見つかり、やはり伝兵衛から鬼平への手紙が添えてあった。

 伝兵衛と蟹蔵は船で逃げる算段をしていた。しかし盗賊改方たちの馬を見かけ、しばらく様子を見ることに。酒井と沢田は船で待っている鬼平を見つけ、二人の死体の件を報告する。あたりに霧がかかり、蟹蔵はまた老女のことを思い出し通行人を襲う。そこへ通りかかった酒井が蟹蔵を切り捨てる。

 伝兵衛は川沿いに逃げる。政吉は彼を助けようと近づくが、伝兵衛は蟹蔵の話を思い出し、政吉を初めて殺した男と見間違う。そこへ鬼平が乗った船がきて伝兵衛を捕まえる。伝兵衛は牢の中でも初めて殺した男を思い出し狂う。

 

 因果応報といったところか。蟹蔵、伝兵衛とも初めて殺した相手の幻影に悩まされ身を滅ぼすという話。鬼平では珍しい水中シーンもあった。

 ちょっとよくわからなかったのは、最後政吉は伝兵衛を助けようとしたのではないのか。水中で取っ組み合いになる前に、鬼平を乗せた船を見つけ、伝兵衛に逃げるように手で合図をしたのではないのか。しかし最後の酒井のセリフでは、鬼平たちは政吉が伝兵衛を捕まえる手助けをしたと思っている。ラストで政吉が蟹蔵からの紹介で別の盗賊たちの仲間になろうとするが、まだ彼は父親の仇の刀を探そうとしていたではないか。

 うーんよくわからないラスト。でも最初に書いたように、因果応報というのがテーマだと思うのだが…

 

阿刀田高の楽しい古事記 阿刀田高

阿刀田高の楽しい古事記 阿刀田高

 古事記を名手阿刀田高が優しく「楽しく」解説した一冊。わかりにくい部分や神の名前だけがいっぱい出てくる部分はバッサリとカットし、物語性が高い部分だけをわかりやすく説明してくれている。古事記の入門書としてはまさにうってつけの一冊。イザナギ、アマテラス、スサノヲ、オオクニヌシ、ニニギ、神武天皇までの流れがよくわかる。しかも各章ごとに関連する現地へ出向き、そこでのエピソードも入っているので、現在のどこ場所が神話部分と関係するのかがよくわかる。

 ちょっと古事記を読み込んで行こうと思う。

 

楽しい古事記 (角川文庫)

楽しい古事記 (角川文庫)

 

 

インセプション

●180 インセプション 2010

 コブは人の潜在意識に潜入し、人のアイデアを盗むことができる人間だった。彼の仕事を見込んでサイトーが仕事を依頼する。それはある大企業を潰すこと、近いうちに創業者の息子ロバートが代替わりするが、その息子に企業を潰すよう仕向けるため、インセプションと呼ばれる意識の植え付けをコブに依頼したのだった。

 コブはそれぞれのエキスパートの仲間を集め、ロバートに意識を植え付ける作戦を実行するが…

 

 話が入り組んでいて冒頭から話がわかりにくい。しかし映画の設定そのものが理解できてくると、話に引き込まれる感じ。人の潜在意識に潜り込む=人に夢を見させその夢を共有、その夢の中で相手と自由に行動する、これがコブにはできる。しかも夢の中で夢を見させることで、階層を降りて行くことも可能で、更に深い潜在意識まで探ることができる、ということ。

 ほとんどが夢の中の話のため、突拍子もない場面も多々あり、自由度が高い(笑 アクションシーンがやりたかっただけかと思うシーンも多々ある。しかし話が進むにつれ、コブの亡くなった妻の話の真相が明らかになってきて、面白さが増してくる。見ている側も途中で気づくが、夢の話ならどこまでが夢なのか、今見ている場面は夢なのか現実なのか、ということが、まさにコブの妻に起こる。

 ラスト、飛行機の中でコブが目覚めたシーンでは一瞬アレ?という表情をするが、見ていた自分も同じだった。夢という形を借りた場面転換の多さゆえだろう。

 ホテルで無重力になったシーンは圧巻かも。どうやって撮影したのだろう?

 

鬼平犯科帳 第4シリーズ #16 麻布一本松

 第4シリーズ #16 麻布一本松

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 暑い夏、忠吾は担当区域である麻布の見廻りに出る。木陰で一休みし居眠りをし、門前の階段で石を蹴飛ばしたところ、その石が浪人の足に当たる。浪人が怒ったため忠吾は急所蹴りをしてその場を逃れる。夜忠吾は五鉄で彦十と酒を飲み、麻布見廻りの愚痴をこぼす。

 4日ぶりに麻布見廻りをしていた忠吾は茶屋で女と出会う。女は先日の浪人との一件を持ち出し、夜祭りであの浪人に襲われた、あの日以来忠吾が来るのを待っていた、日を改めてお礼を申したいと話す。二人は3日後茶店で会うことを約束する。

 その女お弓は実は浪人と知り合いで、浪人に惚れていた。しかし浪人はお弓の気持ちを理解していなかった。お弓は忠吾との約束の話をし、敵討ちをしようと話す。

 約束前日忠吾が見廻りに行こうとすると、鬼平が一緒についてきた。麻布に差し掛かった際、悪漢たちが二人を襲う。鬼平は悪漢たちを返り討ちにするが、忠吾は足に怪我を負い、動けなくなってしまう。

 浪人はお弓の主人と碁を打っていた。主人も浪人とお弓をくっつけようと話をする。浪人はその話を聞き、自分の剣術道場へ戻る。そこに忍び込んでいた者がおり襲われるが、返り討ちにする。

 翌日鬼平に沢田が報告をする。昨日の悪漢は堀本虎太郎一味の残党だとわかる。鬼平は以前堀本を切り捨てていた。忠吾はどうしても麻布に行きたいと話す。そこへさrに知らせが。昨日の悪漢の一人が麻布の番所に突き出された、突き出したのは市口又十郎だとわかる。鬼平は麻布には自分が行くと忠吾に話す。

 鬼平は又十郎の元を訪れ、礼を述べる。そこへお弓が現れ、約束の件と忠吾が名乗った「木村平蔵」の名前を出す。鬼平はお弓に「木村平蔵」のことを聞き高笑いする。鬼平は又十郎と酒を飲み、お弓のことを話す。

 鬼平は忠吾の元に行き、お前に会いたがっている人を連れてきたと話す。忠吾が喜ぶとそこに又十郎が現れる。

 

 これまた鬼平シリーズによくある忠吾の失恋話。前回「忠吾なみだ雨」がシリアスな話だったのに対し、今回の話は大笑いできる話。しかも鬼平が浪人に恋の指南をする、珍しい話とも言える。

 特に悪いヤツが出て来るわけでもなく(悪漢は出て来るが)、無骨な又十郎と憎めないお弓、そして間の抜けた役となる忠吾、とここまで笑える話も珍しい。でもこんな話も鬼平の魅力。

 

ギャング・オブ・ニューヨーク

●179 ギャング・オブ・ニューヨーク 2002

 ニューヨークのファイブポインツの覇権を争っていたネイティブと移民の組織が対立し決着をつけるべき決闘が行われた。移民組織デッドラビッツのリーダーでアムステルダムの父ヴァロン神父はネイティブのリーダーであるビルに殺され、ネイティブ側の勝利に終わる。アムステルダムは少年院に送られる。

 16年後、少年院を出たアムステルダムはニューヨークへ帰ってきて、子供の頃から彼を知るジョニーと出会う。彼からニューヨークの現状を聞かされる。ビルが街を牛耳っており、デッドラビッツの仲間たちもビルの手下となっていた。アムステルダムは女スリのジェニーと出会う。

 アムステルダムはビルの手下となり、仕事で成果を上げ、徐々にビルの信頼を得ていく。政治家の手により縛り首が広場で行われ、その夜はダンスパーティが開かれる。そこでアムステルダムはジェニーにダンス相手に指名される。夜も共にするが、ジェニーがビルの女であるを知った彼は彼女から離れる。

 アムステルダムは賭けボクシングが法律で禁止された際にアイデアを出しますますビルに気に入られる。ビルが芝居を見ている時に移民に襲われるがアムステルダムが助ける。それを見ていたモンクが彼を叱責する。彼は昔の父の仲間で同じアイルランド人だった。

 アムステルダムがジェニーと結ばれる。夜中に目をさますとそこにはビルがおり、自分の過去や父親のことをアムステルダムに話して聞かせる。彼はアムステルダムの父ヴァロンのことを讃える。ジェニーに惚れていたジョニーはアムステルダムのことをビルに密告する。

 アムステルダムは16年前の戦いを祝うパーティの場でビルを殺そうとするが失敗し、ビルから顔に火傷を負わされる。

 ジェニーの介抱でアムステルダムは隠れて暮らす。そこへモンクがやってきてヴァロン神父の死体から盗んだものと言ってカミソリを渡す。子供の頃父親から言われていたものだった。それを見たアムステルダムは、デッドラビッツの再結成を誓う。

 力をつけてきたデッドラビッツに政治家が近寄ってきてアイルランド人の票をまとめれば力になる、と話す。アムステルダムはモンクを保安官に立候補させる。選挙の結果モンクが保安官になるが、ビルは彼を殺す。アムステルダムはビルに決闘を申し込む。街ではアイルランド人の暴動が起こり、軍が出動する事態に。決闘が始まるが、軍の戦艦からの砲撃で決闘の場も大混乱に陥る。そんな中、アムステルダムはビルとの一騎打ちをするが…

 

 どこまでが史実なのかよくわからないが、ニューヨークで実際にあったことなんだろうか。先日見た「勇気ある追跡」の中でも、一般市民が縛り首をショーのように見ている、というシーンがあったが、この映画でもそれが行われている。また映画の中ではアイルランド人に対する差別がひどい。昨日見た「戦場のピアニスト」でのユダヤ人弾圧に比べればまだ映画を見る分にはマシな方だったが、結果暴動が起きるぐらい酷かった。これも史実なんだろう。

 映画は2002年のもので、ちょっと時間が経っているが、アメリカでは未だに移民の受け入れを拒否したいトランプがウケていたりして、状況はまったく変わっていないんだろう。

 この映画も「戦場のピアニスト」同様、見ておかなくてはいけない1本だったかと思う。

 

戦場のピアニスト

●178 戦場のピアニスト 2002

 1939年ワルシャワ、ピアニストのシュピルマンはラジオでの演奏中にドイツ軍の侵攻が始まり局から逃げ出す。その後街はドイツ軍に占領され、ユダヤ人差別が始まりユダヤ人たちはゲットーへの移住を迫られる。ユダヤ人であるシュピルマンの家族も同じだった。そしてユダヤ人の強制収容所送りが始まり、家族共々送られることになるが、列車に乗る直前に、シュピルマンのみユダヤ自治警察の知り合いヘラーに助けられる。

 彼はゲットーでの生活を余儀なくされるが、市場で知人を見かけ、かのじょに助けてもらい、ゲットーからの脱出をする。隠れ家を転々とするシュピルマンだったが、そこも危険な状態となる。そこで知人に渡されていたメモにある住所を訪ねる。そこに住んでいたのは、友人の妹とその夫だった。夫婦の助けを借り、また隠れ家生活を始めたシュピルマンだったが、ワルシャワ蜂起が発生、彼は完全に孤立してしまう。

 廃墟と化した家の中で隠れて生活をしていた彼だったが、ある時ドイツ将校に見つかってしまう。ピアニストだと話すと将校はピアノを弾くように命じる。彼が弾くと将校は黙って去っていった。そして将校はシュピルマンが隠れていた家をドイツ軍の拠点としながら、彼に食料などを施す。

 ソ連軍がワルシャワに迫り、ドイツ軍は撤退することに。将校はシュピルマンに食料や服を渡し、最後にシュピルマンの名を尋ねる。

 しばらくして戦争が終わり、シュピルマンは助かる。そして音楽仲間から将校の話を聞く。シュピルマンは戦争前の生活に戻り、ピアノを弾くのだった。

 

 第二次世界大戦時、ポーランドであった実話らしい。ユダヤ人の迫害がこれでもかと描かれ、胸が締め付けられるような思いで映画を見た。ワルシャワ蜂起は知らなかった、この映画を見なければ知ることはなかったと思う。人の命がとても軽い戦時。下手なギャング映画よりも、人が射殺されるシーンが多かったのではないか。

 胸の痛む映画だったが、最後のドイツ軍将校とのエピソードで見ている方も救われる。戦争もいやだが、人種差別はもっと嫌だと思える作品。

 

戦場のピアニスト(字幕版)

戦場のピアニスト(字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

 

勇気ある追跡

●177 勇気ある追跡 1969

 ロスはトムを連れ、馬の買い付けに出かける。しかし酒場で酔ったトムはロスを撃ち殺してしまう。ロスの娘マティは父親の遺体確認のために街へ出る。そこで復讐のため連邦保安官コグバーンを金で雇おうとするが、コグバーンは高額な金額を要求してくる。

 マティは父親が進めていた馬購入の件で売主に掛け合い300ドルをせしめる。この金でコグバーンを雇うことに。その晩宿に戻ったマティはラビーフに話しかけられる。彼も別件でトムを追っていたテキサスレンジャーだった。一緒にトム探しをするように持ちかけられるが、ラビーフはテキサスにトムを連れて行くと主張、この街で縛り首にしたいマティとの意見は相容れなかった。翌朝マティがコグバーンの家に行くとラビーフが来訪していた。ラビーフはトムの賞金の話をコグバーンにし、彼も乗る気になり、二人は一緒にトムを探すことに。マティは連れていけないと言われる。

 二人がトム探しの旅に出るとマティが付いてきた。二人は嘘を言って川を渡る船にマティが乗れないようにするが、彼女は馬とともに川を渡る。そんな彼女を見たコグバーンは彼女の同行を許可する。

 三人は山の中で小屋を見つける。調べるとそこにはトムの仲間と思われる盗人が二人いた。彼らは二人を捕まえトムの行方を喋らせる。二人は仲違いし片方が刺される。刺した男をコグバーンは射殺する。トムたちがその小屋に来ると聞いた三人は待ち伏せをする。しかし仲間の二人は撃ったが残りに逃げられる。

 盗人たちを追跡するが、山中でマティが一人の時に偶然トムで出会う。彼女はトムを撃つがその仲間に捕まってしまう。コグバーンとラビーフはマティの命を助けるためにその場を去ることに。盗人たちは逃げるが、馬の数が足りずマティとトムがその場に残ることに。マティが逃げ出そうとしてトムに捕まりピンチとなるが、戻ってきたラビーフが助ける。コグバーンは盗人四人と撃ち合いになり彼らを倒す。マティはトムと戦うハメになり、蛇の穴に落ちる。コグバーンはトムを射殺する。蛇に噛まれたマティを救うため、コグバーンは馬を走らせ知り合いの医者のところへ。

 危険な状態だったマティは助かる。そして彼女の代理弁護士大ゲットがコグバーンの元に訪れ謝礼金を支払う。コグバーンとマティはマティの父親の墓を参る。彼はマティに別れを告げる。

 

 前に見た「オレゴン魂」の前作らしい。どうりでジョン・ウェインがアイパッチをしている保安官なわけだ。

 ストーリーは父親殺しの復讐のため、少女が助っ人を頼む話。そう助っ人。彼女は頼むだけではなく、自らの手で復讐しようとし、危険な目に会うことになる。しかし結末は彼女が復讐を果たすわけではなく、ジョン・ウェインが殺してしまうのだが。

 ジョン・ウェインの映画はこれで7本目。この作品の6年前に作られた「マクリントック」で既に強い女が描かれていたが、この作品ではそれがなんと少女になっている。西部劇も来るところまで来たんだなぁという感じだったのだろうか。しかし見ていて違和感があるわけではない。マティ役の女優さんは美人でもなく、ゴツいわけでもなく、本当に西部時代の大人しそうな少女といった雰囲気を持っていた。それでいて口ではジョン・ウェインに負けていないところ、むしろジョン・ウェインが少女にやり込められるところがこの映画の「売り」だったのかも。

 それでもジョン・ウェインがアカデミーを取った作品。当たったんだろうなぁ、続編も作られたことだし。確かにある意味安心して見ていられる娯楽作品だった。