天国と地獄

●073 天国と地獄 1963

 靴メーカーナショナルシューズの工場担当常務の権藤(三船敏郎)の家に重役が集まり、社長に対するクーデターの話を持ちかける。しかし権藤はその話を突っぱね、自分の理想の靴を作りたいと話す。権藤は5000万を使い会社の株をトータル47%を入手しようとする。これだけの株があれば会社を乗っ取ることができるためである。

 その時権藤に子供を誘拐したと電話が入り身代金を3000万を用意するよう言われる。そこへ息子が帰って来て権藤は一安心するが、一緒に遊んでいた運転手の息子が行方不明に。権藤は間違えて運転手の息子が誘拐されたと判断し警察に連絡する。

 警察が権藤邸に来て事件対応をする。警察の戸倉警部(仲代達矢)は権藤に子供の命優先、今回の事件の身代金は桁違いに高いと話す。

 そこへ誘拐犯から電話があり、子供の間違えたことを伝えるが、3000万は払ってもらう、身内への身代金要求ではないから、これは脅迫罪には当たらないと話す。権藤は自分を笑い者にするだけの犯人たちに3000万を支払うつもりはないと話す。しかし権藤の妻は自分の子供には3000万出すと言ったのに、と権藤を非難する。そこへまた犯人から電話があり、運転手の息子の声を聞かせる。声を聞いた運転手はどうか3000万を払って欲しいとお願いする。権藤の妻がまた話をし、権藤は大阪へ5000万持っていく予定だった秘書を呼び止め、大阪行きは明日にしろと命じる。

 翌日権藤は3000万は払わないと宣言。しかし秘書がこの話がバレたら権藤の作る靴を誰も買わなくなると反対する。権藤が問い詰めると、秘書は重役たちに一連の話をバラしたと告げる。戸倉警部は犯人からの電話には金を払うとだけ言って欲しいと伝える。

 犯人から電話があり、身代金を払うには子供の姿を見せるのが絶対条件だと告げる。身代金の取引のために電車に乗るように、金はカバン2つに詰めろと言う。

 電車では車内電話がかかり、酒匂川の橋で子供の姿を見せるので、橋を渡りきったところで洗面台の窓からカバンを投げるよう指示される。権藤は子供を確認し指示通りにする。

 警察による捜査が始まる。電話box、電車内から撮影した写真、8mmから突き止めていく。犯行に使われた車も見つかる。運転手は息子を連れてその記憶を元に犯人の居場所を突き止めようとする。刑事たちも集まった情報から犯人の居場所を突き止めようとし、運転手親子とある場所で一緒になる。その家では男女が死んでいた。しかしこの男女はヘロインの過剰摂取による殺人だと思われた。その場には分け前と思われる金と共犯者に対するメモが残っていた。

 戸倉はこの共犯者の死をマスコミに伝えるが発表は待って欲しい、その代わりに身代金の一部が使用されたと発表して欲しいと要望、マスコミはお金が使われたこと、権藤解任の動きがあるナショナルシューズ社を叩く記事を掲載する。

 運転手の息子から新たに主犯の似顔絵が、また病院の焼却場から身代金を入れたバックを燃やした痕跡が見つかる。病院、焼却場での聞き込みから容疑者が浮かぶ。しかし戸倉は犯人をしようとはしない。現状では誘拐罪しか問えないからだと説明する。そして犯人に共犯者からと思わせる手紙を渡す。犯人を泳がせ、警察は全力で犯人を追う…

 

 黒澤監督作品の現代物は初めて見た。誘拐という成功が困難な犯罪をテーマとしそれでもまんまと成功させる前半と、警察の地味だけれど確実な捜査を見せる後半と、どちらも見応え十分だった。警察の囮捜査?にはちょっと疑問符がつくが、wikiによれば当時の刑法の罪の軽さを思えば、映画的には仕方ないところか。

 三船敏郎仲代達矢は言うまでもないが、その他にも豪華な俳優陣が出ているところも今となっては見どころか。上映時間の長さを感じさせない展開はさすが。