地中海殺人事件

●102 地中海殺人事件 1982

 ピーター・ユスティノフ演じるポワロシリーズの一作。

 宝石のすり替えに関して保険会社から調査を依頼されたポワロは地中海の小島のリゾートにやってくる。そこに集まった客は、その中の一人である元女優と何らかの関係がある人間ばかりだった。そしてその元女優が浜辺で死体となって見つかる…

 

 ユスティノフのポワロの前作はナイル殺人事件で、映画の作りは前作と同じ。事件が起こるまでのエピソードが丁寧に描かれるが、それは謎解きの場面で犯罪の可能性の再現として使用されるため。また関係者全員に動機があるのも同じ。この映画では、ほぼ全員にアリバイがあるところが面白い点になっている。

 一見一番関係なさそうな容疑者が犯人なのはお約束だが、ポワロに犯行を明かされた後、証拠がないことを逆手に取り、潔くないところは新鮮かも。もちろん、ポワロによって最後に証拠が突きつけられるのだが。というか、最後の最後で、映画冒頭の無関係に見えた殺人まで関係してくるのはチョットびっくり。

 何十年も昔の原作に(原作通りかどうか知らないが)ケチをつけるつもりはないが、一点だけ。犯人のアリバイを証明することになる人間が、偶然その場に居合わせることになったのは、如何なものか。用意周到に犯行を行うのに、そのアリバイ証明が偶然の出会いだったのは、後から考えるとちょっとおかしい気がする。

 しかし、リゾート地を舞台にした典型的な古いミステリーを楽しめた。犯行自体も一捻りがあり、その謎解きの部分ではなるほどと感心させられた。ここのところ、ちょっと重たい映画が続いたので、良い気分転換になったかな。