犬神家の一族

●106 犬神家の一族 1976

 昭和22年2月、莫大な財産を残し、犬神製薬の創業者犬神佐兵衛が亡くなる。

 7ヶ月後、金田一那須市を訪れる。古舘法律事務所の若林に呼ばれたためだった。宿に着いた金田一は窓から湖を眺めていたが、ボートに乗った珠世が助けを求めているのに気づく。猿蔵と彼女を助けた金田一が宿に戻ると、若林が死んでいた。若林は金田一に「近く犬神家に容易ならぬ事態が勃発する」という手紙を送っていた。古舘は犬神家の遺言状を若林が読んだのではないかと話す。

 遺言状は一族が揃った際に発表することになっていた。長女松子の息子佐清がまだ復員していなかったが、松子が博多から佐清を連れて戻ってくる。佐清は頭巾を被っていたが、古舘の要請により頭巾を取ると仮面を被っていた。仮面の下の顔は全面焼けただれていた。遺言状が公開される。遺言状の内容は、珠世に譲ることとするが、条件として佐清・佐武・佐智の誰かを配偶者とすることだった。また4人が相続権を失った場合は、青沼静馬に相続されることとなる。静馬は佐兵衛が女工に産ませた子供だった。

 佐武と佐智は那須神社に奉納されている佐清の手形を使って、仮面の男が本当に佐清か確認したいと言い出す。発案者は珠世だった。しかし松子は手形の押印を拒む。

 街の宿屋柏屋に復員兵がやってくる。彼は顔を隠しており、宿帳への記載を拒む。

 そして第1の殺人が起こる。猿蔵が作った菊人形の一体の顔が佐武の生首にすり替わっていた。犯行現場は展望台だった。犯人は首を切り落とした後、胴体は湖に投げ込んだと思われた。現場には珠世のブローチが落ちていたが、珠世はそこで佐武に襲われていたのだった。

 松子は佐清に手形を押させることに同意、鑑識が鑑定し、同一のものと判断される。

 湖で大量の血痕と斧が残されたボートが発見される。警察は聞き込みから、金田一はボート付近の捜索から、柏屋にたどり着く。

 佐武の葬儀が行われる。その夜、珠世の部屋に復員兵が現れるが逃げて行く。その直後叫び声が聞こえ、展望台で佐智が倒れているのが見つかる。

 湖からは佐武の胴体が浮かび上がる。死因は花切り鋏、首を切ったのは鉈で犯人は2種類の凶器を用意していたことになる。

 金田一は佐兵衛の伝記から犬神家発展の理由を古舘に聞く。秘密は芥子の栽培だった。芥子から麻薬が作られる。大量の麻薬を軍部が買い上げていた。

 湖でボートに乗っていた珠世は佐智に騙され廃屋に連れて行かれ襲われそうになるが、復員兵が助ける。

 金田一は若林の死因を調べる。芥子由来の毒物だと判明する。

 そして第2の殺人が。佐智が屋根で死体となって発見される。しかしそこは犯行現場ではなかった。死体の首には琴糸が巻きつけてあったことから、竹子は斧(よき)、琴、菊の話、佐兵衛が50歳を過ぎて青沼菊乃に三種の家宝、斧琴菊を渡してしまったのを3姉妹は取り返しに行った話をする。金田一那須神社に三種の家宝の話を聞きに行く。珠世は佐兵衛の本当の孫だった。

 松子は珠世に佐清との結婚を迫るが、珠世は断り、この人は佐清ではないと話す。松子と佐清は自室で一緒になった際、佐清は自分は佐清ではなく青沼静馬だと名乗る。静馬は戦場で佐清と出会ったが、彼は戦場で戦死したので犬神家の乗っ取りを計画したと話す。

 そして第3の殺人が。湖で佐清の死体が見つかる。金田一は死体と奉納手形が一致するか検証すべきだと言い出し、検証すると違う人物のものと判明する。金田一は死体は青沼静馬だと話す。

 珠世の部屋に佐清が現れる。佐清は殺人は自分が犯人だと告白し、珠世に犬神の家を捨てるよう言って去る。その時手紙を落として行く。佐清は廃屋にいるところを警察に捕まる。珠世は佐清が残した手紙を金田一に渡す。内容は殺人の告白だった。

 佐清の取り調べが始まり告白を始めるが、金田一はそれを否定し真相を語り出す…

 

 記念すべき角川金田一シリーズ、石坂金田一シリーズ第1作。何度見たかわからないぐらい見ている。それでも久しぶりに見ると感動する、というかわかっていなかったことがあったりする(笑

 古い旧家、しかも豪邸。金屏風の部屋の豪華なこと。それに負けない豪華な俳優陣。音楽はなぜかこの1作でシリーズから降りてしまうが大野雄二。

 外枠だけではない。次々と起こる連続殺人、しかも三種の家宝になぞらえられて。全てを解明する名探偵、しかも犯人すら知らないことを最後に話し出す。そして関係者が集まった場で全ての謎解きをする定番のシーン。

 この後のシリーズにも継承される不気味な雰囲気。静かな、しかしゾッとさせるシーン。

 いやぁ名作。おどろおどろしいものばかり見た最後の爽やかなラスト。また何年かしたら見ちゃうだろうなぁ。