獄門島

●109 獄門島 1977

 石坂金田一シリーズの3作目。

 昭和21年、金田一は獄門島にやってくる。島へ渡る船に寺の釣鐘も積まれる。鬼頭家分家の一(ひとし)の復員の情報も届いていた。金田一は鬼頭本家の千万太が書いた手紙、絶筆を持っていた。手紙は金田一の友人が千万太から預かったもので、代わりに了然和尚に届けに来たのだった。

 金田一鬼頭家本家で、千万太の従姉妹、分家の娘早苗、分け鬼頭(分家とは異なる)の巴、千万太の妹月代、雪枝、花子、奉公人勝野などを紹介される。3姉妹は鵜飼と言う男に惚れていた。鬼頭家の主人与三松は座敷牢にいた。

 金田一は了然和尚の寺に泊まることになる。通された部屋で俳句が書かれた屏風を見かける。

 床屋に駐在が訪ね、海賊が逃げ島にいるかもしれないと話す。そこへ金田一が分け鬼頭への道を聞きに現れる。駐在は金田一に早く島を出るように言う。理由を問われ、金田一が知らせた千万太の死は、この辺りで一番大きい網元鬼頭家の跡取りが死に、後継問題が起きる、3人娘か、分家のひとしか、そこへ分入っているのが、分け鬼頭と言うことのようだった。分け祈祷の巴は本家を狙っており、養子はいないが鵜飼という元兵隊を使って3人娘を操り本家を潰すというのが魂胆だった。

 本家で千万太の葬儀が行われるが、花子の行方がわからなかった。葬儀を始めようとした時、早苗の悲鳴が聞こえる。金田一が様子を見に行くと猫が飛び出したのでと聞く。金田一は早苗に3人娘のことを聞き、本当は千万太から自分が帰らないと3人娘が殺されると友人に話したと話し、自分は探偵だと名乗る。葬儀を中止し、みんなで花子を探すことに。寺に戻った和尚の叫び声が聞こえ、皆が行くと、寺の庭の木に花子が逆さ吊りにされていた。和尚はそれを見て「きちがいじゃ仕方がない」と呟く。金田一は庫裏の錠前がねじ切られているのを発見する。庫裏の中には誰かが潜んでいた跡があった。また花子の死体から手紙が見つかる。

 金田一の部屋に駐在が来る。県警の到着が遅れる、昨夜の件を聞きたいので駐在所まで来て欲しいと言われ駐在所へ行くと、留置場に閉じ込められる。

 県警の等々力警部が来て取り調べが始まる。庫裏にあったタバコが英字の辞書で巻かれているのを早苗が与三松に巻いているものと同じだと指摘し与三松のアリバイを確認する。花子の死体から見つかった手紙についても早苗に聞く。手紙は鵜飼から月代への手紙だった。そこへ巴と鵜飼が来る。鵜飼に花子と会わなかったか確認する。待ち合わせの場所に月代の代わりに花子が現れたと話す。

 そんな中、雪枝が殺され、それを和尚が見る。

 警部は分家で庫裏にあったのと同じ軍隊靴の靴跡を見つける。

 雪枝の行方が分からなくなっていた。天狗の鼻と呼ばれる岬で釣鐘が見つかり、その下から雪枝の着物が発見される。駐在は金田一に事情を話し解放する。漢方医が岬側で復員服の男に襲われそれをきっかけに釣鐘下に着物が見つかる。釣鐘はてこの原理で持ち上がり、中から雪枝が見つかる。和尚は「無残やな兜の下の螽斯」と呟く。巴はとんだ道成寺だことと話す。

 警部は本部へ連絡し、海賊は復員服を来ていることを知らされる。釣鐘現場付近で復員服の男が潜んでいた証拠が見つかる。本鬼頭の印の入った風呂敷も見つかる。警察は山狩りを始める。

 金田一は分け鬼頭へ行き、儀兵衛から3姉妹の母お小夜のことを聞く。お小夜は旅回り女歌舞伎の座長で島にも年に一二度回って来ていた。与三松が先妻を亡くしたばかりで、お小夜に惚れたが、嘉右衛門は大反対だった。お小夜の血族に祈禱師がいることを知った和尚も反対していた。金田一は儀兵衛と元芝居小屋に行き話の続きを聞く。お小夜は祈禱師もしており、3人目の娘を臨月でもないので本家で産み本家に居ついた。与三松はお小夜のために祈祷所も作った。そこは一つ家と読んでいた。晩年お小夜は狂いそのため座敷牢が作られた。

 月代は犯人を呪うため祈祷所で祈祷を始める。

 金田一は祠で床屋の娘と出会う。娘は祠でかんざしを見つけていた。娘から島では俳句が盛んだと聞く。その時復員兵を見かけ追う。山狩りをしていた警察と合流する。復員兵は死亡するが撃たれた跡はなかった。

 与三松が行方不明になり、念のため調べると月代が殺されていた。金田一は早苗に与三松を逃したのは早苗で、復員兵に食料を用意していたのも早苗だ、そして今また誰かをかばっていると指摘する。

 寺に戻った金田一は部屋から屏風がなくなっているのに気づく。話を聞きに床屋の主人を訪ねる。そこで3つの句を聞き、3件の殺人が俳句の見立てであることに気づく。さらに床屋の客から釣鐘が歩いた話を聞いたと聞かされる。それを聞き金田一は海に出て、岬の下を調べ、海底からハリボテの釣鐘を見つける。

 そして金田一の謎解きが始まる…

 

 3作目で犯行が一番映像的な作品。俳句の見立て殺人であるため、言ってはいけないが殺され方が美しい(自分が嘉右衛門の思惑通りに思ってしまっている!)。提灯を持った犯人が死体を運んでいたことや2つの釣鐘を使ったことなど、トリックはこれが一番すごいか(手毬唄は一人二役という大トリックがあったが)。

 音楽も象徴的で田舎の孤島の雰囲気をよく出している。大原麗子司葉子が親子であったのは蛇足のような気もするが、原作とは違う犯人像を強調するためには仕方ないか。うーん、ここだけがよくわからない。