キューポラのある街

●144 キューポラのある街 1962

  鋳物の街川口市。石黒辰五郎が務める工場は合併のため、工場をクビになることに。その頃家では辰五郎の妻トミが出産をするところだった。娘ジュンは生計を助けるため、学校の友人ヨシエがしているパチンコ屋でのアルバイトを紹介してもらう。ジュンの弟タカユキは鳩の売買をして小遣いを稼いでいた。トミはタカユキのポケットからお金が出て来たことを不審がり、問いただす。そこへ辰五郎が帰って来て叱り、タカユキは家を出て、ヨシエの弟で友人のサンキチの家に行く。ジュンはヨシエの家に勉強して行くことを知ると辰五郎は怒る。ヨシエの父は朝鮮人だからだった。ジュンは父に反発する。そこへ工場の克巳がやってくる。辰五郎の仕事の件で労働組合の話をするが、辰五郎は自分は職人で組合は気に入らないと話す。

 ジュンはタカユキを連れ戻しに行く。タカユキが帰るとトレーニングパンツが買ってあり、タカユキは機嫌を直す。そこへタカユキの弟テツハルが呼びに来る。タカユキが飼っていた鳩が猫に食われてしまっていた。

  ジュンはパチンコ屋でのアルバイトを克巳に見つかってしまうが口止めをする。学校で修学旅行の話になり、お小遣いが去年の500円から1000円に変更となる。ジュンは帰り道ヨシエとお金の話をする。二人ともお金には困っていた。そこへノブコがジュンを誘いに来る。ノブコはジュンに勉強を教えてもらうのだった。勉強中ノブコはジュンに貰い物の口紅をプレゼントする。恥ずかしがるジュンだったが、ノブコは大人なら皆していると話す。ジュンは自分はまだ大人になっていないと答える。

 ジュンはバイト中にヨシエから弟が泥棒の手伝いをさせられていることを聞かされる。ジュンはその現場へ行く。タカユキは鳩を渡せなくなったことの償いに手伝いをさせられていることを知り、代わりにお金を支払うと告げるが、男は兄貴が怖いからダメだと言う。ジュンは兄貴のところへ乗り込み、話をつける。しかし男たちに乱暴されそうになる。タカユキがそれを助け、二人は逃げる。ラーメン屋で二人が話しているとそれを聞いたノブコの父が励ます。

 ジュンはトミから友達のところで勉強するのをやめ、家にいて赤ん坊の面倒を見て欲しいと言われる。トミは働きに出るつもりだった。その夜、ノブコの父が辰五郎に新しい仕事を紹介してくれるという話が舞い込む。翌日ジュンはヨシエにアルバイトを辞めることを知らせると、ヨシエももうすぐ辞めると話す。理由を聞くと、ヨシエは朝鮮に帰るからだと話す。タカユキもサンキチから同じ話を聞く。

 学校の学芸会でサンキチは朝鮮人であることをバカにされる。それに怒ったタカユキをそれを言った男の子を殴りに行く。

 修学旅行の日の朝、辰五郎は仕事は辞めると言い出す。オートメーション化された工場では職人として働けないと言う。ジュンやタカユキが反発するが、辰五郎は言うことは聞かない。ジュンは沈んだ気持ちで家を出る。修学旅行の待ち合わせの川口駅にジュンは行かなかった。河原をうろつくジュンだったが、突然生理になる。意を決したジュンは、自分が行きたいと思っていた高校を見に行く。夜になり家に戻ろうとしていたジュンだったが、母トミが働いているお店に行くと、トミは客と一緒にお酒を飲んで盛り上がっていた。行く場所のないジュンは旅館に泊まろうと躊躇していた。そこへ友人のリスが通りかかり、一緒に遊ぼうと誘われる。その頃ジュンの家には、学校の先生から旅行に来なかった理由を知らせろと言う電報が届く。ジュンはバーでリスと踊っていたが不良たちがそれを見て、酒に薬を入れ飲ませようとしていた。深夜薬で眠ってしまったジュンを男たちは部屋に連れ込み乱暴しようとする。そこへジュンを探しに克巳が警察と一緒にやってきて、ジュンは難を逃れる。

 タカユキはサンキチと早朝牛乳配達のビンを盗んでいた。しかし配達の男に見つかり小舟で逃げる。男は追いかけてきて、お前たちのせいで親に薬を買ってやれなかったと言われる。二人は逃げ切るが、どちらが言い出してやったことかで揉める。

 旅行の日以来学校に来ないジュンを心配して担任が家にきてジュンに勉強の大切さを話す。トミからも同じように言われるが、ジュンは店でお酒を飲んでいたトミに怒りをぶつける。

 ヨシエとサンキチたちが朝鮮に行く日がやって来る。二人の母は一緒に行かなかった。ジュンもタカユキも見送りに行く。タカユキはサンキチに鳩を託す。その鳩が手紙を持って帰って来る。サンキチの母に手紙のことを知らせようとタカユキは家に行くが、そこにはサンキチがいた。彼は列車に乗ったのち、母が恋しくなり、一人戻ってきたのだったが、母はすでに結婚をするためいなくなっていた。

 ジュンもヨシエからの手紙をもらう。もっと二人で話したかったと書かれていた。ジュンは工場の見学に行き、そこで働きながら学校に通っている女性の話を聞く。

帰りに新聞配達をしているタカユキを見かけ声をかける。彼はサンキチのことを話し、助けるために一緒に働いていることを話す。家に帰ると辰五郎が上機嫌で克巳を酒を飲んでいた。会社が好調なのと組合の力で辰五郎は仕事に復帰できることが決まった。親はジュンに希望の高校へ行くことを進めるが、ジュンは働きながら定時制高校へ通うことを決めたと話す。

 サンキチが朝鮮へ出発、ジュンも新しい生活を始めるのだった…

 

 吉永小百合出世作だということは知っていたので、彼女のアイドル映画のようなものだと思っていたが、全く異なっていた。

 1962年昭和37年の日本の一面を描いている映画だった。まだまだ貧乏が当たり前の家があったり、北朝鮮帰国運動が普通に行われていたりする時代。東野英治郎演じる辰五郎が語る「ダボハゼの子はダボハゼなんだ」というセリフ。そんな中で全てを諦めかけた吉永小百合演じるジュンが希望を持って自らの足で歩き始めるところが共感を呼んだのだと思う。彼女も良いが、タカユキとサンキチのコンビも悪ガキっぽさ満載で良いなぁ。

 

 吉永小百合出世作だというだけではない、キチンとした傑作。

 

キューポラのある街

キューポラのある街

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video