思い出トランプ 向田邦子全集 第一巻

●思い出トランプ 向田邦子全集 第一巻

 

 これまでも向田邦子は読んだことはあったが、昨年末の阿修羅のごとく再放送をきっかけに読んだ。13編の短編集。著者の考えで、短編集にまとめられた時に、発表順ではなく、トランプに合わせシャッフルした、とあるが、この短編集では、前半は人が人前には出していない気持ちや考えが現れた時の怖さや驚きが、後半は過去の自分の体験を思い出しそれが今の状況なりと重なった時に気づく怖さなどが描かれている。

 解説?で爆笑太田さんが書いているが、「生きていること自体が事件の原因となる」を小説にしている凄さがここにはある。

 後半の作品では戦後の生活のシーンが何度か出てくる。事故で亡くなった方で、古い世代の人だと思っていたが、内容はいつの時代でもあり得る話ばかり。未読の作品はまだまだ多いが、読むのが楽しみのような、怖いような…。