秋の花 北村薫

●秋の花 北村薫

 私シリーズの第3作でシリーズ初の長編。例によってこの作品の良さは解説で十分書かれているのでちょっとだけ。登場人物たちがしっかりと年齢を重ね、成長していっている。そんな中の一人、「私」が近所の昔からの知り合いの女子高生が火曜学校で起きた事件の謎を解き明かしていくもの。「私」が成長しているのはもちろんだが、そんな「私」が知り合いの女の子たちがしっかりと成長していっているのを見る視線でも描かれている。しかもその女の子たちは過去の作品にちょっとだけ顔を出している、という北村さんならではの手の込んだ作品。

 円紫師匠の「(許すことはできなくても)救うことはできる」というセリフが心に残る。そして「野菊の墓」をいつか読まなくては、と思う。