バルカン超特急

●168 バルカン超特急 1938

 列車が不通となりホテルを取ろうとする客でフロントが混雑する。その中には、元々の滞在客であるアイリスをはじめとする女性3人組やクリケット好きのイギリス人2人組、不倫をしている弁護士カップルなどがいた。アイリスは来週結婚の予定で、友人二人からからかわれていた。

 イギリス人たちはホテルでディナーを取ろうとするが、客が多すぎるため食事の準備ができなかった。相席となった老婦人である家庭教師がイギリス人たちにチーズを譲る。家庭教師が部屋に戻ると上階から騒音が聞こえる。隣の部屋のアイリスも騒音に困っていた。二人はフロントに掛け合い、上階の客を追い出す。上階の客はアイリスの部屋に入ってきて部屋で寝ようとする。アイリスは仕方なくフロントに電話し、上階の客を戻すように指示する。

 翌日列車が動き皆が駅に集まる。家庭教師がアイリスに荷物が見つからないと声を掛ける。アイリスは彼女が落としたメガネを渡そうとするが、その時駅の建物から植木が落ちてきてアイリスは頭を打ってしまう。

 アイリスは家庭教師と同個室となる。家庭教師はアイリスを心配し食堂車でお茶をしようと提案する。二人は一緒にお茶をすることに。家庭教師は給仕にハーブティーを渡しそれを入れるように指示する。二人はお互いの自己紹介をし、家庭教師はフロイと名乗り、窓に綴りを書く。お茶に砂糖を入れようとし、隣の席にいたイギリス人たちに砂糖を取るようにお願いする。

 個室に戻った二人、アイリスは少し眠る。起きるとフロイがいなかった。個室の客に話を聞くがアイリスは最初から一人だったと言われる。食堂車でも同様、2等車両へ探しに行くが見つからず。そんなアイリスを見て2等の客ギルバートが協力を申し出る。もう一度個室に戻るとそこにはハーツ医師もおり捜査に協力してくれるが、結果は同じだった。ハーツ医師は頭を打って幻覚をみたのでは、と話す。別の個室の不倫カップルやイギリス人たちは自分の都合で、フロイを見ていないと証言。

 列車が最初の停車駅に着く。ハーツ医師の患者が担架に乗せられ乗車するが、顔は包帯だらけだった。また降車する客はいなかった。不倫カップルの女性が男が離婚しないことに業を煮やし、フロイを見たと証言する。そこへフロイが個室に戻ってきたと知らせが入る。アイリスとギルバートが個室へ行くと女性がいたが、アイリスの見たフロイではなくクーマーと名乗り最初からここにいたと話す。納得できないアイリスは不倫カップルの女性とクーマーを引き合わせるが、彼女もこの女だったと証言する。

 アイリスは自分の記憶に自信をなくす。ギルバートは彼女を食堂車に誘う。そこでアイリスは窓に書かれたフロイの字を目撃するが、列車の排気で一瞬で消えてしまう。アイリスは興奮して列車を止めるが、間も無く再出発する。

 呆然とするアイリス、ギルバートは一人通路でタバコを吸っているとコックがゴミを窓から投げ捨てる。ゴミの中にあったハーブティーの包み紙が一瞬窓に張り付く。ギルバートもアイリスの話が本当だと確信する。二人は列車の中を調べ始める。貨物車に入り込んだ二人はフロイのメガネを発見する。そこへ手品師が来て二人の邪魔をし格闘となるが、二人掛かりで手品師を倒す。しかし手品のトリックで逃げられる。

 協力者が必要と考えた二人はハーツ医師の部屋に行く。そこには患者と修道女がいた。しかし修道女はハイヒールを履いており怪しかった。包帯だらけの患者がフロイと考えた二人は包帯を外そうとする。そこへ医師が戻って来て事情を聞かせろと言い、3人は食堂車へ。医師は二人に薬を飲ませるつもりだった。食堂車で酒を飲んだ二人は個室に戻る。医師から患者はフロイであること、二人は薬を飲まされたことを聞き意識を失う。医師は次の駅でフロイを降ろすつもりだった。なぜか意識を失わなかった二人は目覚め、ギルバートは隣の個室へ窓伝いで入る。修道女の協力もあり、フロイを助ける。そこへクーマーが現れたため、彼女を包帯巻きにする。

 ハーツ医師は手品師に協力料を支払っていた。駅に着き、患者とともに救急車に乗ったハーツ医師だったが、フロイではないことに気づく。列車の車両を切り離し、列車は支線に入って行く。それに気づいたギルバートは食堂車に集まっている他の客に事情を説明する。そのうち列車が停車。外には軍の車が待っていて銃撃戦となる。フロイは事情を説明する。彼女はイギリスのスパイだった。そして彼女は列車をおり逃げようとするが、万が一を考え、メロディになっている歌をギルバートに伝え、何かあったら外務省に知らせて欲しいと頼む。銃撃戦を行いながら、客たちは列車を運転し本線に戻る。そして駅に着く。アイリスは婚約者が迎えに来ていたが、ギルバートとともに車に乗り込む。そして二人は外務省へ行く。メロディを忘れてしまった彼だったが、部屋の中からそのメロディを奏でるピアノの音が聞こえてくる。部屋にいたのはフロイだった…

 

 このブログ初のヒッチコック作品。しかもイギリス時代の作品らしい。1938年に作られているのに、ストーリーは秀逸。列車の中で消えた夫人、というだけでもう引き込まれる。しかも周りの証言も主人公の話を否定する。しかし一部は自己都合のため嘘の証言をしているだけ、という手の込みよう。それでいて途中に主人公が頭を打ち映像がぼやけるシーンも挟まれるので、本当に主人公が間違っているのでは?と観客に思わせる。

 そして終盤フロイが見つかるが、そこからの話の展開もすごく飽きさせない。そもそも映画冒頭はホテルでのシーンが長く、邦題の「〜超特急」が全く出てこない。しかしホテル内でのエピソードも面白く、しかもしっかりと人物紹介やミスリードの役目をしている(ミスリードと言っても、イギリス人コンビが主役のように思わせそうでないことだが (笑

 さすがヒッチコック。タイトルも邦題よりは原題(The Lady Vasnishes)に近い意味の方がわかりやすかったと思うのだが…