ヒトラー暗殺、13分の誤算

●192 ヒトラー暗殺、13分の誤算 2015

 映画は一人の男が爆弾を設置するところから始まる。

 1939年11月8日、ヒトラーが演説していた講堂で爆発事件が起こる。爆弾を設置したゲオルクは逮捕され、取り調べが行われる。取り調べという名の拷問だったが、ゲオルクは最初質問への回答を拒否する。

 しかし恋人だったエルザを取り調べ室へ呼ばれ、とうとうゲオルクは話し始める。それは7年前の1932年、ゲオルクとエルザの出会いから始まる。

 時計職人で音楽家でもあったゲオルクは酒場でエルザと出会い恋に落ちる。街ではナチ党が選挙で勝利を収め、政治が変わり始めていた。ゲオルクは反ナチの活動をしており、仲間も捕まる。世の中は新しい技術、映画を見せるなどして、ナチへの賛同が広まって行く。

 取り調べでゲオルクは単独犯だと自供するが、ナチの上層部がそれを許さない。しかしゲオルクを取り調べるネーベは彼の自供を信用して行く。

 ゲオルクはエルザと恋仲になり、彼女の住む家に下宿することになる。またナチの宣伝映画から戦争になることを懸念、何とかしてこの動きを食い止めなくては、と考え始める。一方、エルザは妊娠し、ゲオルクの子供を産む。

 ゲオルクは爆弾の図面を説明、単独犯であることをネーベなどに信じさせる。

 エルザが産んだゲオルクの子供は死んでしまう。ゲオルクはエルザを置いて爆弾を仕掛けるためにミュンヘンへ向かう。

 ゲオルクの取り調べはナチ上層部が行うことに。自白剤を打たれるが、ゲオルクは単独犯であるという主張を変えなかった。ゲオルクはナチスを支持すると考えを変える。そして強制収容所へ収監され、敵の攻撃を受けた日に、テロ攻撃で死亡したとされ、1945年ゲオルクは処刑される。

 

 ヒトラー暗殺の失敗を描いた映画、というよりは、1932年以降ドイツ国内での変化を描いた映画、というべきだろう。主人公ゲオルクを通して描かれるのは、国民含めナチの狂気の政治が突き進んで行く姿だった。ゲオルクやその仲間たちのように、このままではいけないと思っていたドイツ人がいた、ということがはっきりとわかる。またハリウッドの映画では、戦争下のドイツ軍人は非道を行うというイメージが強く、この映画でも残酷な拷問シーンがあるが、ゲオルクを取り調べたネーベや書記官役の女性の行動は冷静で暖かく、見ている側にとっては救いだった。

 一人の指導者に集団が陶酔していくのがいかに怖いか。今の日本でもっと見られても良い映画だと思う。