しゃべれども しゃべれども

●201 しゃべれども しゃべれども 2007

 今昔亭三つ葉は師匠小三文の弟子で二つ目の落語家。今イチな自分の状態をなんとかしようと師匠に新しい噺を稽古してもらおうとするが師匠は相手にしない。

 ある日師匠のお付きの弟弟子が病気になり、代わりに三つ葉が師匠のお供をしてカルチャー教室へ。三つ葉は師匠の話の途中で席を立った女性が気になり彼女を追いかけ、席を立った理由を問いただす。本気で話していないと答え去っていく彼女に三つ葉は自分が出る落語会の日程を教える。

 二つ目4人による落語会。三つ葉は目の前の席にあの女性が座っていることに気づき慌てた三つ葉の出来はボロボロに。会の後、三つ葉は女性に会う。彼女は十河と名乗りどうやったら上手に話せるのかと三つ葉に尋ねる。

 三つ葉は家に帰る。家では祖母が茶道教室をしているが、その生徒郁子から甥に落語を教えて欲しいと言われる。その甥は大阪から引っ越して来て大阪弁をカラかわれいじめられているとのこと。

 後日、三つ葉の家に十河と甥の村林がやってくる。三つ葉が講師となり、二人が生徒となる。落語まんじゅうこわいを聞かせ、覚えさせるために台本も用意する。村林は噺を覚えることに興味はないが、十河はあっという間に覚えてしまう。家に祖母が帰ってくると玄関のあたりに不審な男が。三つ葉は村林に枝雀の落語のビデオを見せる。不審な男は山田と名乗り、喋り方のトレーニングをやっていると聞いて、と話す。そこへ村林が興奮気味に入ってくる。彼は枝雀の落語の虜になっていた。村林は山田を見て、湯河原だと叫ぶ。湯河原は元プロ野球選手で解説が下手なことで有名だった。三つ葉の生徒は3人となった。

 ある日十河が浴衣を縫うことを祖母に習いに家に来る。ほおずき市へ行くために浴衣を作っていると聞いて、三つ葉は一緒に行こうと十河を誘う。二人はほおずき市へ行くが、三つ葉が鬼灯を買おうとすると十河は突然いらないと言い出す。結局買わずに二人は蕎麦屋へ。そこで十河は昨年付き合っていた男と今年のほおずき市に来る約束だったことを告白する。人を好きになったことないでしょと言われた三つ葉は、郁子のことを話し、でも一緒に浅草を歩けて楽しかったと言うと十河は涙を流す。

 三つ葉は一人ほおずき市に戻り鬼灯を買い、十河の勤めるクリーニング屋の前に置いておく。

 3人の生徒が家にやって来て勉強会をする。湯河原は携帯に出るなどやる気を見せない。村林にからかわれた湯河原は怒り出す。それを見た十河がそうやって本音で解説をしてみれば、とTVをつける。湯河原は帰ってしまう。

 図書館で勉強をしている三つ葉に郁子が声をかけて来る。歌舞伎の話になり、郁子は三つ葉に一緒に見に行かないかと誘う。なけなしの貯金をおろしチケットを買う三つ葉。郁子とのデートで彼女の作って来た弁当を食べながら話をするが、来年結婚をすると聞き、腐った弁当を食べつくしてしまう。その夜、腹を壊した三つ葉は師匠の落語火焔太鼓を聞きに行く。会がはけた後、三つ葉は師匠を待っていた。師匠の落語が好きですと話しその場へ倒れてしまう。三つ葉は病院へ運ばれる。病院で師匠に次の一門会で話せと言われ、ネタは何にすると聞かれる。三つ葉はさっきの火焔太鼓と答える。

 三つ葉は火焔太鼓の練習を始める。

 村林から三つ葉に電話があり、枝雀の話を覚えたので、湯河原に聞いて欲しいと話す。三つ葉は湯河原の働いている店に行く。店でも解説の不味さをからかわれている湯河原に三つ葉は選手をバカにしても面白いと思わせれば勝ちでしょとアドバイスすると、湯河原からお前はどうなんだと返される。

 村林の落語を聞こうと湯河原が家に来ていた。しかし村林は学校で同じクラスの宮田と野球勝負をすることになったと話す。湯河原は絶対勝てると村林に打撃を教える。

 三つ葉は師匠に火焔太鼓を聞いてもらうがダメ出しをされる。三つ葉は十河の店に行き、しばらく落語の勉強会は中止だと話す。十河は自分たちの発表会はどうするのかと聞く。自分たちも本気だと十河が言うと三つ葉は発表会をやると答える。

 村林の母親から電話が入る。息子が家に帰ってこないと聞く。夜湯河原が家にきて村林からの手紙を受け取ったことを話す。十河がこの家の中にいるのでは、と言い出し探すと三つ葉の部屋の押入れに村林がいた。怒った三つ葉は村林を叩いてしまう。

 三つ葉、湯河原、十河の3人で酒を飲みに行く。三つ葉は教室をやめにしようと言い出す。落語をやったからといって何も変わらないと話し、十河に当たる。十河も言い返しその場を去る。

 ひどい二日酔いになった三つ葉は寝過ごしてしまう。その日は一門会の日だった。遅れて会場入りした三つ葉。出番直前の三つ葉に師匠は酒を飲ませる。三つ葉は見事に火焔太鼓を演じきる。

 三つ葉は村林の学校へ会いに行き、叩いたことを謝る。そして発表会の話をし、宮田も呼べと話す。そして村林と十河の二人の落語会を開くことになる。落語会当日、宮田など村林の学校の友達も大勢見に来る。村林は見事に演じ、宮田を笑わせる。十河はまんじゅうこわいではなく、先日三つ葉が演った火焔太鼓を演じる。

 無事落語会が終わる。帰り際、湯河原は来年から2軍コーチとなると話す。三つ葉は3人を見送り、一人隅田川の船に乗る。そこへ十河が現れ、言い残したことがあると言い、鬼灯の礼を言う。三つ葉もそれに答える。二人は船上で抱き合うのだった。

 

 小説が原作の映画化作品。落語を題材にした映画は何本かあるが、ちょっとイマイチだったか。原作がどうなのか知らないが、三つ葉の成長物語とするなら、三つ葉の火焔太鼓がラストで良かったと思う。と言うか、そもそもおそらく小説では上手く描かれているであろういろいろなことの機敏が映画では描き切れていないように思う。

 三つ葉の郁子への思い(弁当の下りの前に雨のシーンがあるがそこでは三つ葉の思いの相手だとはわからなかった)、三つ葉の落語家としての成長(火焔太鼓がいきなり上手くなるか?酒だけが理由では悲しすぎる)、十河の三つ葉への思い(香里奈の演技力もあるし、キャラクターの性格の問題もあるが、ずっとこわい表情しかしていなかったし。蕎麦屋の涙でそれに気づけと?)などなど。

 伊東四朗さんの落語家ぶりは見事だし(落語もそうだが、カルチャーセンターでのいかにも落語家さんが話そうな話し方で話すのが凄い上手)、八千草薫さんは可愛いおばーちゃんだったし(自らもまんじゅうこわいを話しているところが抜群)、このお二人はさすがだが、他の人たちは見事に子役に喰われちゃった感がある。

 落語好きとしては、ちょっと残念な作品かな。