クリスタル殺人事件

●205 クリスタル殺人事件 1980

 ミス・マープルはミステリー映画の犯人を言い当てるほどの推理力を持った老婦人。そのマープルの住む田舎街で映画撮影が行われることになった。久しぶりに女優として復帰するマリーナ、その夫で映画監督のジェイソンらがやってくるため、街をあげての大歓迎会が催される。街の住民も多数参加し賑わっているパーティに、マリーナと犬猿の仲でやはり女優のローラがその夫で映画プロデューサーのマーティとともに顔を出す。その時、街の住民バブコックと話していたマリーナは凍りついた表情を見せる。

 それからしばらくして、バブコックがパーティ会場で死んでいるのが発見され大騒ぎとなる。

 会場で足を怪我し早めに家に切り上げたマープルは事件発生時に会場にいなかったため、その場にいた人たちから話を聞いていた。そこへマープルの甥でスコットランドヤードの警部ダーモットがマープルの家にやってくる。マープルはダーモットから事件のあらましを聞く。死因は睡眠薬の多量摂取による毒殺だった。また当日メイドとして参加していたマープルの家の家政婦にも状況を聞く。そこで殺されたバブコックが飲んだ毒入りの飲み物は、マリーナが飲もうとしていたものだったことを知る。

 ダーモットは捜査を開始する。ジェイソンの秘書、ジェイソン、ローラ、マーティと事情聴取をする。その中で、マリーナが心の病を患っていること、それは産んだ子供が先天性の病気を持っていたことに由来すること、などを知る。

 そしてマリーナにも事情聴取をする。マリーナは脅迫状を受け取っていることを聞く。やはり狙われていたのはマリーナだった。

 映画の撮影が始まる。撮影の合間の休憩時間にマリーナに運ばれて来たコーヒーの中にも毒が入っていたことが判明する。ジェイソンはコーヒーを運んだ秘書を問い詰める。しかし秘書は花粉症の薬に入れられていた毒薬で殺されてしまう。

 マープルはパーティの場でマリーナが凍りついた表情を見せた時にバブコックが何を話していたのかが鍵だと考える。そして街の牧師に話を聞く。

 マープルはマリーナの家を訪れる。帰れと言い張るジェイソンに、事件の真相を語り出す…

 

 この映画が封切られた時に映画館に見に行った記憶がある。だから40年ぶりに見たが、犯人もその動機もしっかりと覚えていた。ただしその他の部分はほとんど覚えていなかったが(笑 だから犯人探しの目線では全く見ずに、映画そのものを純粋に見ることができた。そんな目で見ても、やはり推理ものとしてはあまりに単純に思えた。おそらくその前に作られた同じクリスティの「オリエント急行殺人事件」や「ナイル殺人事件」のヒットを受けて作られたものなんだろうけど、容疑者が多いわけでもないし、というか殺されたのが、害のなさそうな街の住民というのもインパクトに欠けるし(まぁそれがこの話の一番のポイントなんだろうけど)。

 この頃日本では金田一耕助シリーズの映画が流行っていて、犯人役は一番の大物出演者というのが定番だった。この映画もその頃子供だった自分でも知っているエリザベス・テーラーが出ていれば、どう考えてもこの人が犯人だろうと思ったし(笑

 イギリスの片田舎ののんびりとしている感じは良いし、音楽ものんびりとしていて好感が持てるが、謎解きとしてはイマイチだった。あとはミス・マープルはもっと小柄な老婦人というイメージがあるので、ちょっと背が高すぎるのもマイナスかなぁ。