初恋のきた道

●219 初恋のきた道 1999

 ユーシェンは父が亡くなった知らせを受け、故郷へ帰る。村長から父が亡くなった経緯を聞く。学校の再建のため走り回っていた父は寒さにやられ心臓病となり亡くなった。病院から遺体を運ぶのに母が担いで帰ると言いだしており、村長たちを困らせていた。ユーシェンは母を説得すると伝える。学校で佇んでいた母を家に連れて戻ると、機織り機を修理して欲しいと言われる。母は機織りで棺桶にかける布を作ろうとしていた。母の思いを知ったユーシェンは、家で両親が結婚した年に撮影した写真を見つける。そして両親の馴れ初めを思い出す。

 父が20歳、母が18歳の時、父は教師として村にやってきた。母は後者にかける赤い布を織る。村の井戸も学校が見える遠い井戸を使う。学校を作る男たちのために村の女性たちは食べ物を作り差し入れをする。母も作り、それを父が食べてくれるかを遠くから見ていた。そして学校が建設され、父が教師となり授業が始まる。母は40年学校に通い外から父の声を聞いていた。

 父は家の遠い生徒を送っていた。母はそれを待ち構え遠くから姿を見ていた。ある日母は父と子供達とすれ違う。父は子供達に母の名前を尋ねる。

 父の食事は村の家で交替ですることになっていた。そして母の家に食事に来る。母は差し入れの食事のことを尋ね、キノコの蒸し餃子が好物であることを知り、夕飯で作ると話す。父が帰った後、祖母は身分が違うのだから父のことは諦めなさいと話す。

 夕飯時父はなかなか家に来なかった。やっと来たが、お別れを言いに来たと話し、町へ戻ることになったことを告げる。そして母に髪飾りをプレゼントする。夕飯を食べに戻ると約束した父だったが、町へ連れて行かれてしまう。母は餃子を持って父の馬車を追いかけるが、追いつけなかった。その際髪飾りをなくしてしまい何日も探し歩く。髪飾りは家の前で見つかる。

 馬車を追いかけた際に器を割ってしまう。祖母はそれを修理に出す。その器は家で父が食事に使ったもので、母の思い出の品だった。

 母は学校の障子の張り替えをし、父がいつ帰って来ても良いようにしていた。それを村長が目撃し、母の思いは村中に知られることになる。

 母は父が帰ると約束した日、雪の中父を待つ。しかし父は帰って来ず、母は病気になってしまう。そんな母のために父は1日だけ村に戻って来る。そのため二人の再会は数年後となってしまう。

 そしてユーシェンは父の遺体を担いで運ぶことに。村長に金を出して人を雇うことに。しかし当日父の教え子たちが100人以上集まり、無事皆で担いで村に戻ることができた。

 

 これまで観た映画の中でのトップ3はどれも10代の時に観たものだが、この映画は大人になってから観た映画の中のトップ3に入る。

 とにかくチャン・ツィイーが可愛い。田舎の娘なので服装も野暮ったいし、走る姿も田舎感丸出しといった感じだが、それらすべてが可愛く見える。二人は手も繋がないし、会話もとても少ない。それでもチャン・ツィイーの先生への思いは十分に伝わって来る。町に戻ってしまう時、髪飾りをなくし山道をさまよう時。だからこそ、一度だけ先生が戻って来た時、走り出して学校へ向かうシーンが泣けるのだ。

 ストーリーは単純。現代シーンがモノクロで、過去の回想シーンがカラーであることも抜群の効果をあげている。今回ざっと調べてみたら、冒頭の現代が15分、回想が55分、最後の現代が20分。チャン・ツィイーは1時間出ていないのか(ラストでもう一度登場するが)。それでこれだけ心に残るとは。

 カリオストロの城でも使われたが、祖母が食器を直す際に言う、「(その器を)使った人は 娘の心を盗んで去っていった」が全てかも。