鬼平犯科帳 第5シリーズ #08 犬神の権三郎

 第5シリーズ #08 犬神の権三郎

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 佐嶋が蕎麦屋明月庵に入る。そこで犬神の権三郎を見かけ、奴が店を出た後に声をかけ捕まえる。権三郎は7年前老夫婦を殺害し金を奪った凶悪犯で、佐嶋は二度取り逃がしていた。鬼平は取り調べを抜かるなと声をかける。

 牢に入っていた権三郎だったが、物置から火事が出る。そのどさくさに紛れ、牢に何者かが侵入、権三郎が逃げる。火付盗賊改方がすぐに調べるが権三郎の行方はわからなかった。

 鬼平は屋敷内のことを知っていなければ今回のようなことはできないと考える。そして何者が手助けをしたのかと、2年前の事件を思い出していた。落針の彦蔵を脱獄させ、彦蔵を餌に雨引の文五郎を捕まえていた。文五郎はその後改心し、鬼平密偵となっていた。酒井たち同心は文五郎が今回の事件に関わっていると話す。鬼平密偵を全員役宅に集める。しかし文五郎だけが姿を見せなかった。

 鬼平は五鉄に行く。文五郎が間借りをしていたためだった。密偵となって2年、疑われることはなかった。文五郎の手引きで盗人を捕まえていたので、盗賊に戻ったということは考えられなかった。

 権三郎は筆師新右衛門の店にいた。権三郎の女おしげはなぜ文五郎が権三郎を助けたのか尋ねる。権三郎は昔文五郎の女の最期を見とっていた。おしげは4年前文五郎と一緒にやった大阪の加賀屋の仕事で、権三郎は店の小僧を殺し、それを文五郎は咎めていたことを話す。だから恩から助けたわけではなく、金ではないかとおしげは話す。

 文五郎は千住の桶屋にいた。文五郎は権三郎を助けた後、千住のご隠居を訪ねろと権三郎に話す。文五郎は掟を破った権三郎がどうケリをつけるのかを知りたがっていた。ご隠居にもし権三郎が逃げたらどうすると問われるが、ならば一生かかっても追いかけると話す。

 密偵たちは文五郎、権三郎の行方を探すが手がかりは見つからなかった。おまさがおしげを見かける。二人は昔の仕事仲間だった。おまさはおしげのことを佐嶋に話す。おしげのあとをつけ住処もわかっており、そこを伊三次が張っていた。そして伊三次は権三郎をその家で見かけ報告に来る。すぐに筆師の家は盗賊改方で見張ることになった。

 権三郎は床下に隠していた金を掘り出す。そこには300両があった。その金は大阪加賀屋の盗みで予想以上に奪った金を権三郎が一人でがめていたものだった。

 権三郎は文五郎を殺すつもりでいた。権三郎はもう一度でかい仕事をして足を洗うつもりだったが、それには文五郎が邪魔だった。権三郎は浪人を二人雇う。そしておしげに文五郎へのつなぎをつけさせる。

 千住の文五郎の家におしげが行き、文五郎に権三郎が来ることを伝える。権三郎は千住の宿にいた。そこへ文五郎から、町外れの八幡で待つとの手紙が来る。権三郎が浪人と神社に行く。そこに文五郎が現れ権三郎を斬る。浪人たちが文五郎を襲おうとした時、同心たちが間に割って入る。それを見た文五郎は逃げようとするが、そこには鬼平が待っていた。文五郎は自らを刺す。

 鬼平は文五郎が最期に残した「けじめ」という言葉について佐嶋と語る。

 

 雨引の文五郎、二度目の登場にして最後の話。タイトルにもなっている犬神の権三郎の話と思いきや、主役はやはり文五郎。最初の登場である「雨引の文五郎」でも存在感のある盗人だったが、今回も印象が強い。

 盗人が密偵となる(「雨引の文五郎」のラスト)話はそれなりにあったが、その後が描かれたのは初めてではないか。それだけインパクトのあるキャラクターだったということだろう。

 話としては、密偵となった文五郎が鬼平を裏切ってまで、なぜ権三郎を助けたのか、という点、そして脱獄までさせたのに、なぜ権三郎を殺そうとしたのか、という2点が謎として描かれる。その解答が最後鬼平から語られる。普段鬼平は盗賊の美学を認めないが、ここでは佐嶋に自らがそのような話をする。そこに価値がある。

 

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