予期せぬ出来事

●238 予期せぬ出来事 1963

 ロンドンの空港に乗客が集まって来る。VIPルームへ案内される客たち。映画監督と女優、公爵夫人、大企業の社長夫人、ジゴロで博打打ちの男、トラクタ会社の社長と秘書。彼らは様々な事情を抱えて、空港に来ていた。

 社長は夫人を見送り会社へ戻る。社長夫人はNY行きの旅行で夫と別れ、ジゴロと一緒になるつもりだった。夫に別れの手紙を書き、家に置いて来ていた。

 映画監督は税金の支払いを逃れるために策を練っていた。そのために1年間イギリスから離れなければいけなかった。

 トラクタ会社の社長は、会社の買収を仕掛けられており、金策に走っていた。

 空港でアナウンスが流れる。霧のために皆が乗る飛行機の出発が1時間遅れるというものだった。

 社長夫人は出発が遅れたことで夫が手紙を読むことを恐れていた。

 飛行機の出発はさらに遅れることに。社長夫人は家に電話して、メイドに手紙を破らせることにし、家に電話をするが、電話に出たのは夫だったため電話を無言で切ってしまう。社長夫人とジゴロは一緒に昼食をとっていたが、そこへ夫が現れる。その時、飛行機がやっと出発するとアナウンスが流れる。社長夫人は夫を振り切って飛行機へ向かうが、夫は行くならその前に殺すと脅す。それでも社長夫人は飛行機へ乗り込む。

 しかし飛行機はやはり霧のため飛び立てず、乗客は空港に戻ることに。飛行機会社は乗客のためにホテルを用意する。乗客は皆ホテルへ向かう。

 映画監督はイギリスを離れることができず窮地に陥る。トラクタ会社の社長はNYの本部へ直談判に行けず、電話で連絡をすることに。

 空港でジゴロに呼び出しがかかる。案内された部屋で待っていたのは、社長夫人の夫だった。二人の男は夫人のことで会話をする。社長はなぜ妻が去って行くのかを知りたがり、ジゴロはそれに答える。

 映画監督は税金逃れのために、女優と結婚し新作映画を彼女を社長にした会社で製作する計画を持ちかけられる。トラクタ会社の社長は電話をするが、相手にされず会社は買収されることになってしまう。彼は女性秘書に最後の食事をしようと誘う。

 社長夫人の部屋へ夫がやって来る。彼は謝罪にしにやって来たが、会話をしているうちに興奮し、夫人の手に怪我を負わせてしまう。そこへジゴロが戻って来る。社長は夫人に別れを告げ、おとなしく部屋を出て行く。

 トラクタ会社の社長は秘書を酒を飲む。二人が良い雰囲気になりかけた時に、社長が呼んだ恋人がそこへ現れ、秘書は帰ることに。秘書はフロントで大企業の社長を見かける。彼は別れた妻に手紙を書いていた。秘書は彼に借金を申し込む。社長はあっさりとそれを受け入れ小切手を渡す。秘書は社長の元へ小切手を持って行く。社長は大喜びするが、恋人は呆れて帰ってしまう。二人は関係者へ急いで電話連絡する。

 翌朝飛行機に乗るために乗客は空港へ集まって来る。

 映画監督はマスコミに女優との結婚をアピールする。公爵夫人は映画監督に持ち家をロケ地にしたいと要望され、その契約金の高額なことに驚き、旅行を取り止めてしまう。トラクタ会社の社長は秘書にキスをして飛行機に乗り込む。

 社長夫人は空港内のスタンドで夫が酔いつぶれているのを見かけ声をかける。哀れな夫の姿を見た彼女は、ホテルでジゴロが預かった夫からの手紙を読む。そこには自殺をほのめかす文章が書かれていた。夫人はジゴロに謝り、夫を探す。そして一緒に家に帰ると告げる…

 

 色々なエピソードが同時進行する、いわゆる群像劇だと知って観ることに。あの「大空港(1970)」のようなものだろうと想像しながら観てみたが、スケールはだいぶ小さく、社長夫婦(エリザベス・テイラーリチャード・バートン)の話が半分ほどを占め、サブエピソード的にトラクタ会社の買収話、とってつけたような映画監督の話の3つのエピソードのみである。コメディリリーフとしての公爵夫人の話もあるが。

 メインの社長夫人の話は、今の世ならばSNSで大炎上しそうな話(笑 それでも内容はともかく、映画の脚本家は実際の女優の話(wiki参照)を元に思いついたというのだからビックリ。というか約60年前なら世間がそんなにうるさくなかったのかしら?しかも主演のエリザベス・テイラーはこの映画と同年に製作された映画「クレオパトラ」で共演しこの映画でも共演しているリチャード・バートンに不倫関係にあったというのだから、二度ビックリ、といったところか。

 トラクタ会社買収のエピソードも内容が電話の会話だけしか手かがりがなく、金策に走っているのはわかるが、買収だとわかるのは映画がだいぶ進んだ後、というのもちょっといただけないかな。

 救いは、コメディリリーフの公爵夫人だが、どうも有名な女優さんらしく、この映画でアカデミー賞と受賞しているらしい。さもありなん。

 あとは邦題か。原題は「The V.I.P.s」、今なら「VIPルーム」で通るかもしれないが、60年前では無理だろうから、邦題をつけたのはわかるけど。邦題タイトルである程度オチがわかってしまうのはどうなんでしょう?それとも飛行機の遅れのことを言ったつもりだったのかな?

 オーソン・ウェルズは初めて映画で観たかも。もう一人、トラクタ会社の秘書さん(エピソード的には一番良かったかな)の顔を観た記憶があったので、wikiで調べて「ナイル殺人事件」や「地中海殺人事件」に出てたことを知り、あぁそれで観た記憶があるのか、と思ってwikiを読み進めたら、なんだハリーポッターの校長先生じゃん。チャンチャン。