緋牡丹博徒

●239 緋牡丹博徒 1968

 明治中頃の話。岩国武花一家の賭場。不死身の富士松が胴師の札繰りにケチをつける。胴師は札を見せるが怪しいところはない。富士松は覚悟を決めるが、賭場にいたお竜が胴師のイカサマを見抜いていた。胴師は指を詰める。

 賭場から出たお竜に富士松道後温泉の熊虎一家の富士松だと挨拶し礼を言う。富士松と別れたお竜は墓参りをしている男とすれ違う。その後、武花一家の胴師と仲間がお竜を襲う。お竜は胴師の顔を斬りつけるが自らも肩に怪我を負う。そこへ墓参りをしていた男が来てお竜を助ける。男は片桐と名乗り、お竜の怪我の手当てをする。その際お竜が落とした財布を片桐が見つける。お竜は財布は父親の仇が持っていたものだと事情を説明する。5年前九州熊本人吉で矢野組の組長をしていたお竜の父はお竜を堅気の人間と結婚させる手はずを整えていたが、その結婚の直前に殺されてしまい、お竜の結婚も破談となり、組も解散していた。一人残ったふぐ新に堅気になるよう言い残し、お竜は旅に出ていた。財布の持ち主を知っている様子の片桐に誰かと聞くが、片桐は答えなかった。そこへ武花一家の追っ手が来て、片桐は財布を持って去ってしまう。

 お竜は四国に向かっていた。道中、熊虎一家が面倒を見た九州の矢野組の人間が岩津の親分と揉めて、組同士の喧嘩になっていると聞く。その矢野組の人間とはふぐ新だった。

 ふぐ新は熊虎親分に一人で岩津の所へ行かせてくれと頼むが、富士松をお竜に助けてもらった義理があるため、熊虎親分はその話を聞かなかった。そこへお竜が訪ねてくる。お竜は身内のふぐ新が起こした喧嘩だから自分に行かせてくれと熊虎に頼む。そしてお竜は一人岩津の親分に会いに行く。

 お竜は拳銃を持ち岩津一家に乗り込む。そしてこの出入りをやめてくれと頼むが岩津の親分は受け入れなかった。お竜はもし出入りをするなら、自分の刺青緋牡丹に銃を撃ち込んでから行ってくれと脅す。そこへ大阪お神楽のおたかが入って来て、この場は私が預かると言い、拳銃を持って庭に咲く緋牡丹を撃ち、場を収める。岩津の親分も出入りは取りやめる。

 熊虎一家では、熊虎がお竜に惚れ結婚をしたがっていた。岩津一家から戻ったお竜に熊虎は固めの杯をかわしてくれと頼み、お竜は受け入れる。結婚を承諾してくれたものと思った熊虎は喜ぶが、お竜は兄弟の契りだと思ったと答える。二人は固めの杯をかわし、兄弟分となることに。

 お竜はお神楽のおたか一家に、富士松とふぐ新と一緒に出向く。おたかの堂万組は千成組と揉めていた。千成組の二代目、加倉井は堂島での仕事について相談におたかの元に来ていたが、おたかは申し出を断る。加倉井は来年市会議員選挙に出るために、堂島の人の協力が必要だった。加倉井は帰って行く。

 加倉井の元へ昔の兄貴分、片桐が訪ねてくる。片桐は加倉井の命の恩人だった。片桐はお竜から盗んだ財布を加倉井に見せる。それは片桐が加倉井に渡した財布だった。加倉井は金のために辻斬りをして金を稼いだ時期があったのだった。片桐はお竜が父の仇を探していることを加倉井に告げる。

 富士松は昔の恋人の芸者君香に会いに行く。しかし君香はすでに身請けされた後だった。身請けしたのは加倉井だった。酔って帰って来た富士松から事情を聞いたお竜は金を持って加倉井の元へ行き、君香を譲り受ける。しかし加倉井はその代わりにサイコロ勝負をお竜に挑む。勝負に勝ったお竜だったが、加倉井は手下を使って、お竜を自分の女にしようとしていた。そこへ片桐が現れ、お竜を助ける。

 お竜は片桐に財布の持ち主を聞くが、片桐はそれは自分だと答える。片桐を刺そうとするお竜に、それで気がすむならと片桐は答える。しかしお竜は片桐を刺せなかった。

 お竜はふぐ新と酒を飲み、ふぐ新が父の仇の顔を覚えていることを確かめる。

 千成組では手下たちが片桐に手厚い加倉井に文句を言う。加倉井はお竜の父を辻斬りした片桐を庇っているのだと嘘をつく。

 ある日、ふぐ新が一緒にいたおたかの息子が行方不明になる。息子は千成組にハメられ拉致されていた。千成組の手下たちはおたかの元を訪れ、人の女に手を出した落とし前をつけるように言い、堂島での仕事に口を出すなと脅すが、おたかは息子は死んでも構わないと答える。ふぐ新は自分のせいで、とお竜に謝る。おたかは一人息子に詫びるが、お竜はそれを見ていた。千成組に、武花一家の胴師がやって来てお竜に恨みを晴らしたいと申し出る。加倉井は彼を受け入れる。

 ふぐ新は単身千成組に乗り込むが、見つかってしまい刺されてしまう。しかし加倉井の顔を見たふぐ新はそれが親分の仇だと確信する。刺されたふぐ新を片桐が助ける。片桐は、千成組の手下たちからお竜の父の辻斬りのことがバレたと言われ、加倉井が嘘をついたことを知る。加倉井も片桐にもう兄弟分の縁は切ると言われ、ふぐ新を連れて千成組を後にする。

 ふぐ新を富士松の家に運び込み看病するが、間も無くふぐ新は死んでしまう。お竜と富士松はふぐ新の仇を取りに千成組に殴り込む。片桐は千成組に入った胴師に襲われる。それが加倉井の指図だと聞き、千成組に。そして加倉井と刺し違えてしまう。

 

 いわゆる東映任侠モノは初めて。高倉健さんの映画はこのブログでも数本観ているが、健さんがヤクザ役をやるのは初めて観た。ヤクザの健さん、メチャクチャカッコ良いじゃん。そりゃ人気出るよなぁ、って感じ。今見てもカッコ良いもの。

 任侠モノってもっと血がドバドバ、って感じだと思ったけど、この映画はそんなに斬り合いのシーンはなく、ラストの殴り込みのシーンぐらい。それでも、冒頭でお竜を助けるシーンや、加倉井の元でお竜を助けるシーンなど、健さんがここ一番で突然現れて藤純子を助けるのは、カッコ良い以外の何者でもない。何でそこにいるの?とか言う疑問は持ってはいけない(笑

 任侠ものだから、最後の殴り込みへ繋がるストーリーがあれば、あとはどうでも良いかな、と感じる。もうこの映画は、カッコ良い健さん藤純子を観るだけのものでいいでしょ。

 と言いながらも、タイトルバックに表示された出演者に意外に知っている人が多く、そのつもりで見ていたが、金子信雄山城新伍はどこに出ていたかわからなかった。観終わった後にネットで調べて、もう一度観てみたが、全然自分の知っている顔じゃなくて(つまり若くて)これも驚いた。

 もう一つ驚いたこと。冒頭の賭場のシーンで「手本引き」をやっている。阿佐田哲也の小説で読んで知っていたが、映画やドラマで「手本引き」をキチンと写したのを見たのは初めてだと思う。確か賭博性が高い博打だから、映像化してはいけないとかいうルールがあったと、阿佐田哲也関係の本で読んだことがあったような気がするが。間違いだったか。意外な収穫だった。