タイムスリップ忠臣蔵 鯨統一郎

●タイムスリップ忠臣蔵 鯨統一郎

 鯨統一郎のタイムスリップシリーズの一作。今回は忠臣蔵。前に同シリーズの釈迦如来を読んでいるので、パターンは理解しているつもりだが。

 話は人間と犬がいる家庭にニュースが流れるところから始まる。ニュースはペットの食糧化という衝撃的なものだったが、さらに驚くのはこの小説の舞台となる22世紀ではペットは人間で、犬が支配している世界だということ。

 食糧化を避けたい人間たちがタイムマシンに乗り、世界を犬が支配する根源となった江戸時代にいき、忠臣蔵の話(=赤穂による仇討ち)を成立させる、というのが目的。

 犬が人間の精神をコントロールできる、というギミックが出てくる。これが大石内蔵助浅野内匠頭切腹直後に、家臣たちが仇討ちをしようとするのを止めようとする、というエピソードに使われる(仇討ちをされたくない犬側が内蔵助をコントロールする)のだが、忠臣蔵の世界にこのギミックが使われるのは、仇討ちをしようとする人間をコントロールにより阻止する、という部分だけ。あとは忠臣蔵の話がそのまま進み、それと並行してこの小説オリジナルの登場人物の人間vs犬の話が繰り広げられるだけ。

 つまり別に忠臣蔵でなくても良くない?という感じになってしまっている。もともとシリーズものだから、レギュラーキャラが活躍すれば良いのかもしれないが。前に読んだ釈迦如来の話はもっと面白かった気がするのだが。あちらは、釈迦に関するエピソードが知らないものが多くてそっちが面白かったのか?さすがに忠臣蔵の様々なエピソードは知っているものばかりなので、ふーんと読んだだけだったので。

 さすがにちょっと無理のある設定だったような気がする。