鬼平犯科帳 第6シリーズ #03 泥亀(すっぽん)

 第6シリーズ #03 泥亀(すっぽん)

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 彦十とおまさが魚藍観音堂を参っていた。その帰りに茶店でお茶をする。その時茶店の主人が店から出て来る。主人の名は泥亀の七蔵といい、以前は藤枝を根城とした盗賊牛尾の太兵衛一味の盗賊宿の番人をしていたが、数年前足を洗っていた。今は病持ちで歩くのもままならなかった。

 七蔵は街で関沢の乙吉と出会う。乙吉は錠前外しの名人で一人働きをする盗賊だった。5年前太兵衛一味の元で、七蔵と一緒に仕事をしたことがあった。七蔵は乙吉から太兵衛が死んだこと、一家はバラバラになったことを聞く。それは手下の梶が谷の三之助たちが、病気になった太兵衛を見限り、金を持って逃げ、太兵衛の家も売り飛ばしていた。これが元で太兵衛は亡くなり、太兵衛の妻と娘も家を追い出されていた。

 七蔵は話を聞いて怒り、三之助の居場所を乙吉に聞く。三之助は江戸で仕事をするつもりのようだった。七蔵は太兵衛一家の配慮で足を洗うことができたことを思い出していた。七蔵は太兵衛の妻と娘に恩を返すために、一人働きをしようと考えていた。

 彦十は夜の街で乙吉と出会う。乙吉は同じ日に七蔵と会ったことを彦十に話す。彦十は粂八が営む船宿鶴やへ乙吉を連れて行く。乙吉は七蔵のことを彦十に話す。

 彦十は乙吉を鶴やに泊め、粂八に盗賊改方へ知らせに行かせる。知らせを聞いた鬼平は忠吾とともに鶴やへ向かい、乙吉を捕まえる。乙吉は取り調べに何も話さなかった。鬼平は彦十とおまさに七蔵を見張るように命じる。七蔵は医者の中村景伯のところへ行く。彼は痔を患っていた。しかし医者を訪ねた後、病気持ちでありながらも盗みの場所を探していた。

 彦十、おまさ、粂八は七蔵の件を鬼平に報告する。そして粂八は乙吉に言われたという触れ込みで七蔵に会いに行く。そして乙吉からといって50両を七蔵に渡す。七蔵は太兵衛の妻と娘がいる御油に向かう。そこは太兵衛の妻の妹が住んでいるところだった。しかし妹は二人を冷遇していた。七蔵は二人と会い、もう心配ないと話す。七蔵は50両の金で二人に家を買い与える。

 鬼平は江戸に戻った七蔵を役宅に引き立てさせる。七蔵はそこで乙吉と会う。そこで七蔵は50両の出どころを知る。鬼平は七蔵を取り調べ、太兵衛一味の江戸での盗人宿を話せば、太兵衛の妻と娘は見逃すと話す。七蔵はなかなか話さなかったが、三之助に対して敵討ちをするつもりだったと話し、盗人宿の場所を答える。

 鬼平は三之助一味を捕まえに出張る。そして一味を捕まえた後、役宅に戻り、七蔵に三之助を裁いたことを伝える。そして七蔵に籠を用意し、茶店に帰らせる。

 

 第5シリーズ前半もそうだったが、この話も人情話の色合いが濃い。冒頭から登場する七蔵も乙吉も盗人(七蔵は元盗人)だが、盗みの仕事をするわけでもなく、計画があるわけでもない。それでいて乙吉は彦十に「ハメられ」、盗賊改方に捕まり、取り調べという名の拷問を受けることに。会話から乙吉は仕事をして江戸に戻ってきた、ということになっているが、そのシーンが描かれるわけでもなく、七蔵に太兵衛のことを知らせただけで、拷問を受けることになっていて、ちょっと気の毒に思えてしまう。まして乙吉役は、あの森次晃嗣、モロボシダンなのだから(笑

 それでもこの話の主役はやはり七蔵役の名古屋章だろう。最初からずっと足を引きずる演技で、途中でそれが痔持ちのためとわかる。まして医者に脅され怯える滑稽なシーンまである。太兵衛の妻と娘に御油で出会うシーンも泣かせるが、鬼平の取り調べにしばらく答えず、堰を切ったかのように三之助に対する怒りを語り出すシーンはこの話の見せ場になっている。名古屋章さんは昔TVでよく見たが、ちょっとトボけた役が多かったように思うが、麻雀放浪記の上州虎のような味のある役も上手い。今回の話は名古屋章さんで救われた感じすらするかも。

 話全体としては、やはり前回の話「#02お峰・辰の市」同様弱い感じがする。上手く表現できないが、歯車が噛み合っていないというか何というか。鶴やでの彦十が乙吉におまさを執拗に売り込むシーンや、七蔵が医者中村景伯で治療してもらうシーンなど、これまでのシリーズならば描かれないだろうと思うがどうだろうか。話を無理に長くするためなのか?原作が短い小説なんだろうか?

 どうも第6シリーズ、ヤバい気がするなぁ。この後大丈夫か?