女王蜂

●247 女王蜂 1978

 昭和7年、伊豆月琴の里の大道寺家に京都の学生二人日下部仁志と速水銀造が遊びに来ていた。彼らは大道寺家の娘琴絵と出会う。

 3ヶ月後、日下部が大道寺家を訪れる。琴絵が妊娠したとの知らせを受けたためだった。しかし彼は母に結婚を反対されており、琴絵に渡した祖母の遺品の指輪を返してもらいに来たのだった。琴絵の家庭教師神尾秀子が席を離れている間に、日下部は殺されてしまう。日下部は崖から落ち事故で死んだと偽装される。

 昭和11年、速水銀造が琴絵に結婚の申し込みに来る。速水は婿でも構わないと話す。

 昭和27年、遊佐が時計台で殺され、現場に琴絵の娘智子がいた。そこへ多門連太郎が現れる。

 大道寺家に金田一耕助が現れる。大道寺家には銀蔵と遊佐たちが昨日から京都より来ていた。智子が19歳になるときに京都へ迎えるというのが目的だった。若い男たちは智子に結婚の申し込みに来ていた。

 銀造は智子になぜ時計台にいたか聞く。智子に身の上の秘密を教えるという手紙をもらい時計台に行ったのだった。金田一は銀造に京都の叶弁護士からの依頼で来たと話し、脅迫状を見せる。その脅迫状と同じものが銀造にも来ていた。

 智子は母の遺品の口紅から、唐の間の鍵は墓の傍に、と書かれたメモを見つける。唐の間は日下部が殺された部屋で、それ以降開かずの間となっていた。智子は鍵を手に入れる。

 静岡県警の等々力警部が大道寺家に現れる。彼は殺された遊佐が智子から時計台に呼び出された手紙を見つける。大道寺家に九十九が現れる。彼は銀造の妻䔍代の兄で、心霊超常現象研究家を名乗っていた。

 金田一は宿屋善屋に宿泊する。そこの宿帳から多門連太郎が宿に泊まっていたことを突き止める。それを巡査に報告に行き、19年前の事故の話を聞く。

 智子は唐の間に鍵を使い入り、そこで血痕を発見する。

 京都の大道寺家に新しい脅迫状が届く。しかしそれは䔍代の息子のイタズラだった。

 金田一は巡査の話から、19年前に殺された日下部が東小路家の縁者だと推理し、叶弁護士とともに東小路隆子に会いに行く。そして智子が隆子の孫にあたること、脅迫状を出した犯人は銀造だろうということを話す。その帰り道、金田一は叶から、智子が東小路家の唯一の跡取りであること、銀造は日下部が死んだ後も東小路家に出入りし可愛がられていたこと、銀蔵が日下部の死は他殺ではないかと言っていたことを聞く。

 東小路家主催のお茶会が開かれ、関係者が集まる。そこで智子が点てたお茶を飲んだ赤根崎が死亡する。事件について大道寺家で等々力警部が銀造に話を聞いているところで、神尾秀子が金田一にアルバムを見せる。金田一は日下部が撮った写真、そこにコウモリが写っている、と話した写真が見たかったのだった。しかしそこにコウモリは写っておらず、旅回りの一座が写っていただけだった。そのアルバムを金田一は借りて帰ろうとするが、帰り道で襲われ、アルバムは奪われてしまう。

 警察に一連の事件の犯人だと思われている多門連太郎が東小路隆子の元に現れる。彼は隆子に言われ、智子に近づいたのだった。

 金田一が入院している病院へ神尾が見舞いに来る。そこで金田一は神尾から好きな人の話、銀造の話を聞く。

 智子は電話で呼び出され、九十九に会いに行く。彼は智子の父が殺された話をした後、密室で彼女に襲いかかる。しかし何者かに小刀を投げられ死んでしまう。

 金田一は写真に写っていた嵐三朝に会いに行き、昭和7年の月琴の里での公演時に若者を一人一座に入れていたことを聞き出す。そしてその後能登へ行き、銀造の母の妹に話を聞く。

 金田一は銀造に会い、銀造の生涯について話を聞く。等々力警部は唐の間で事件があったことを確認する。金田一も唐の間を調べる。

 そして関係者を集め、事件の謎解きを始める…

 

 石坂金田一シリーズ4作目。シリーズは全て何度も観ているが、今回女王蜂を観て、この作品と次の「病院坂〜」は、前の3作品(「犬神家」「手毬唄」「獄門島」)に比べるとあまり回数を観ていないことに気づいた。なぜだろう?TVでの放送回数が少ないのか?やはり前3作品に比べると、後の2作品は人気がないのか。確かに前3作品が、見立て殺人(「犬神家」は3種の家宝、「手毬唄」は手毬唄、「獄門島」は俳句)だったのに対し、後2作品はそうではないから、石坂金田一シリーズ独特の不気味さが弱い感じがする。

 それでも今回久しぶりに女王蜂を観て初めて知ったことがある。それは前3作品の犯人だった女優陣が勢揃いしているということ。子供の頃、女王蜂を観て、正直なぜまた岸恵子が犯人なんだろう(ホントは違うけど、仲代達也を殺しちゃうしね)、1回犯人役をしてるじゃん、と思った記憶があるが、よく考えてみれば、高峰三枝子さんも司葉子さんも犯人だったじゃん(笑 wikiを見てこの映画がそんな豪華俳優陣で固められていたことに今更ながら気づいた。

 しかも今回の犯人は仲代達也。NHKの「清左衛門残日録」を見て以来、大ファンの俳優さん。「清左衛門残日録」については、後日ブログで取り上げるつもり。当時40歳代半ばの仲代さんが、学生役を演じているのも一興、そういえば子供の頃随分と老けた学生だな、と思った記憶がある(笑

 他にも、伴淳三郎さんが狂言回しの役割でずっと出ていたり、いつもの石坂金田一の常連さん(常田富士男坂口良子小林昭二大滝秀治三木のり平)もしっかりと出ているし。もちろん加藤武さんも。ヒロイン役の中井貴恵さんがあまりに新人していて文句を書いているレビューも多いが、何も知らずに育ち、19歳で突然連続殺人事件に巻き込まれる主人公としては、あれぐらいがちょうどよいのでは?悲劇に見舞われる主人公が変に演技が上手くても興ざめするし。

 ミステリーとしては、先にも書いたように見立て殺人でないだけ、見所は少ないし、その殺人どうやったのよ、と思う場面もあったが、仕方なしか。そのぶん、豪華な俳優陣の見せ場はそれぞれにあったし、金田一はいつも通り旅をして証拠を集めてくるし。

 最後は「病院坂」。これはこれでめちゃくちゃ怖いんだよなぁ。子供の頃、シリーズの中で一番観るのがイヤだったもの(笑