三つのアリバイ 女子大生桜川東子の推理 鯨統一郎

●三つのアリバイ 女子大生桜川東子の推理 鯨統一郎

 シリーズ9作目にして最終巻。

 7作目でレギューラーメンバーの死があり、驚いたところ、前作「テレビドラマよ永遠に」でそれが見事にひっくり返され(笑 さぁ最終巻どうなる、と思って読んだ一冊。

 前作でほぼ禁断の技とも言える手段を使って、登場人物を蘇らせたことをどうイカしてくるのか、と思ったが、それについてはあまりイカされていない感じ。ただ最終巻でこのシリーズ全体にかけられていたトリック?が明示され(1巻ずつ、話数が減ってきていた)、最終巻では1話の長編小説となっている。確かに巻を追うごとに、話数が減ってきていたのは感じていたが、単なるネタ切れだと思っていた。

 と言っても、話数が減ってきたこと自体にトリックがあるわけでもなく(ひょっとすると最終段階で議論される『物語が少なくなってきている』ということを暗示していたのか?)、その分、この最終巻が長編とならざるを得ず、しかも章で分けられているわけでもなく、約200ページが一気に書かれている。しかもこのシリーズの設定でもあるバーでの中の話のため、200ページ分が一夜のバーでのお話となっていて、若干読みづらい、というか、会話があまりに長すぎて、リズムが悪くなっている。

 それでも、意外な犯人という意味ではなかなか頑張った作品であり、シリーズを終わらせるための話の展開にもなっていて、最終巻とするための苦労が伺える。巻末に「20年のシリーズ、ついに完結」とあり、そんなに長く続いたシリーズだったんだと初めて知った。鯨さんらしいあらゆるジャンルをネタにしたシリーズ、とりあえずお疲れ様でした、かな。また新しいシリーズで楽しませてくれることを期待します。