めまい

●253 めまい 1958

 ジョンは刑事。警官とともに屋上を逃げる犯人を追跡していたが、隣の建物へ飛び移る際に転落しそうになる。それに気づいた警官が助けようとするが、誤って警官は転落し死亡する。この事故が原因でジョンは高所恐怖症になり、警察を辞職する。

 ジョンは学生時代に婚約までした女友達ミッジの家にいた。同じ学生時代の友人ガビンから連絡があったことをジョンは話す。そして彼に会いに行くことに。

 ガビンはしばらく行方知らずだったが、妻の実家が営んでいる造船業を手伝うために1年前に家に戻って来ていた。そんな彼がジョンに頼みごとをする。彼はジョンが警察を辞めたことを知っていた。彼は妻マデリンの素行が最近おかしいこと、まるで死者に取り憑かれているようだ、と話し、マデリンを尾行するように依頼する。ジョンは断るが、ガビンは夕食の場所を教え、マデリンを見て欲しい、と頼む。

 ジョンはガビンが夕食をとるレストランに行き、マデリンを見る。ジョンは外出をするマデリンを尾行する。彼女は花屋で花束を買い、墓地で100年前に亡くなったカルロッタ・バルデスの墓を参る。そして美術館に行き、肖像画に見入る。マデリンは、肖像画の女性と同じ髪型をし、同じ花束を持っていた。ジョンは美術館員に彼女が見ている絵画のことを聞くが、それはカルロッタの肖像だった。次に彼女はマキトリックホテルに入る。ジョンは彼女の姿を2階の部屋の窓に見て、ホテルに入る。フロントに警察手帳を見せ、部屋のことと彼女のことを聞く。彼女はカルロッタ・バルデスの名前で部屋を借りていた。しかしフロントは今日は彼女を見ていないと話すため、ジョンは部屋を確認して欲しいと頼む。確かに部屋には誰もおらず、マデリンが乗って来たはずの車もなくなっていた。

 ジョンはミッジに街の古いことを知っている人間を紹介してもらう。それはアーゴシイ書店の主人だった。ジョンは彼からカルロッタのことを聞く。彼女は田舎から街にやって来て金持ちに見初められ、屋敷を与えられ子供も産んだが、金持ちに捨てられ、子供も奪われ、失意のうちに自殺した、とのことだった。その屋敷がマデリンが借りていたマキトリックホテルになっていた。

 ジョンはガビンに報告をするが、彼はカルロッタのことを知っていた。カルロッタはマデリンの曽祖母だった。しかしマデリンはカルロッタのことは知らないとガビンは話す。

 ジョンはマデリンの尾行を続けた。美術館に行った後、彼女はゴールデンゲートブリッジのたもとに立ち寄り、海へ飛び込んでしまう。ジョンは彼女を助けるが、彼女は飛び込んだ時の記憶をなくしていた。彼はマデリンを家に連れて帰り話をするが、ガビンからの電話に出ている最中に、彼女は帰ってしまう。

 翌日もマデリンを尾行するジョンだったが、マデリンが向かったのはジョンの家だった。そこで彼女は手紙をポストに入れており、彼に謝罪に来ていたのだった。二人はドライブに出かける。そこで彼女は悪夢を見る話をし、取り乱す。ジョンは彼女を扶けると話し、二人は恋に落ちる。

 ジョンはミッジに呼び出され彼女の家に行く。彼女はジョンと連絡が取れないことを心配していた。そして例の肖像画に似せた自分の肖像画を見せると、ジョンは怒って帰ってしまう。

 ジョンの家にマデリンがやってくる。また悪夢を見たと言って、夢の中の場所について話し始める。ジョンはその場所は実際にある場所であることに気づき、二人で行ってみることにする。そこでマデリンは話し始めるが、一人で教会に向かってしまう。ジョンは追いかけるがマデリンは教会の塔に登り始める。ジョンは高所恐怖症のため登れず、マデリンはその間に飛び降りて死んでしまう。

 マデリンの死亡に関する裁判が行われる。マデリンに自殺願望があったこと、ジョンの高所恐怖症のこと、などが取り上げられ、ジョンにマデリンの自殺に対する責任はなかったものとされる。ガビンはジョンに謝罪し、この地を離れると挨拶する。

 ジョンは悪夢にうなされるようになり、精神病院に入院する。

 月日が経ち、ジョンは退院する。ジョンはマデリンとの思い出の場所、レストラン、美術館、花屋を巡る。花屋の前でマデリンに似た女性を見かけ、彼女を追いかけかのjのホテルの部屋を訪ねる。そして好きだった女性に似ていると正直に告白をし、彼女ジュディを夕食に誘う。彼女は了承する。

 しかしジュディこそがマデリンとしてジョンと会っていた女性だった。ジュディはマデリンと似ていることを利用し、ジョンと会い、あの日も教会の塔に登り、塔の上で待ち構えていたガビンが本当の妻マデリンを塔の上から落としたのだった。

 ジュディはジョンから逃げようと考え手紙を書くが、手紙は破り、ジョンと夕食に行くことに。夕食が終わり、ジョンは明日も会いたいと話し、ジュディも受け入れる。そしてジョンは彼女に花を買い、服も買い与える。しかしそれがマデリンが着ていたものだと気づいたジュディは、服はいらないと言い張るが、ジョンは聞き入れなかった。そして髪の色、髪型までジョンの言う通りにする。

 そして二人は夕食に出かけようとするが、ジュディがネックレスが、カルロッタの肖像画に描かれていたものであることにジョンは気づいてしまう。そして車でマデリンが自殺した村へジュディを連れて行く。そして嫌がる彼女を教会の塔に連れて行く。そしてジュディを問い詰め、自白させる。ジョンは高所恐怖症を克服し、塔の上まで上がり、事件の真相を聞く。ジュディは謝罪し愛を告げるが、その時二人だけのはずの場所に人影が現れ、それを見たジュディは恐怖で塔の上から転落してしまう。それは声を聞いたシスターだった。

 

 このブログでのヒッチコック作品は5作品め。先週の「知りすぎていた男」に続いての鑑賞となる。「知りすぎていた男」もそうだったが、映画の前半はすこぶる面白かった。死者に取り憑かれた女性、しかも本人も記憶がないままに行動までしている、いくらサスペンスの王様ヒッチコックでも、そりゃ無理でしょ、と思いながら観てました(笑

 で謎が解決できないまま、突然その女性マデリンが塔から飛び降りて死んでしまう展開。サスペンスとは別の意味で、えっ!と驚いた。ジョンは抜け殻みたいになっちゃうし、まさかここからフラれちゃった感じだったミッジが活躍するの?と思っていたら、またまた急展開。まさかの似ている女性を発見し、ホテルまで追いかけちゃうジョン。今なら完全にヤバいストーカー(笑

 ここでいきなりのネタばらしが始まる。このタイミング(映画半分ちょっと過ぎたところ、まだ1時間弱時間を残していた)でのネタばらしって、ヒッチコックさんどうしたの?という感じ。ここからはジョンの執拗なジュディをマデリン寄せしていく過程が描かれる。ここも今ならヤバい人だよなぁ。観ているこちらはネタばらしを知っているので、愛するジョンのためにジュディが言うことを聞いてしまうのもわかるけど。

 最後のオチは肖像画のネックレス。途中のネタばらしがあった時点で、映画は倒叙トリックものになるわけで、何が決定打になるかが見せ場。決定打としては十分良かったと思う。しかし、映画としてどうなんだろう。この映画を解説したネットのページを読むと、ヒッチコックは周りの反対を押し切って、途中でのネタばらしを決めたそうだが(この方がその先の展開を観客が楽しめる、と考えたそうで)、自分としてはラストに全てがわかる方が劇的効果はデカかったのでは、と思えるんだけど。でもそうすると、あの村の教会へ行く理由がなくなってしまうし、最後のあの『シスター登場』(貞子か、と思いました 笑)シーンもなくなってしまうわけで、そう考えるとやはりこの映画の流れの方が収まりが良いのかしら。

 前半の面白さからくる期待感が、後半に入る段階でのネタばらしで一気にしぼんでしまった感は否めないなぁ。まだもう少しヒッチコック作品を観られるみたいだから、そちらに期待しましょう。