伊豆の踊り子

●257 伊豆の踊り子 1974

 温泉宿の玄関口で旅芸人一座が芸を披露している。一高生はその時初めて踊り子の顔をはっきりと見たのだった。

 一高生は伊豆を歩いている最中に雨に降られ茶屋に駆け込む。そこには一座もおり、踊り子が一高生のために席を譲ってくれる。しかし茶屋の女主人が一高生だけを特別扱いし、店の奥へ呼び込んでくれる。踊り子は同じ大島出身のきみのために買ったお守りをあげることを楽しみにしていた。

 間も無く雨が上がり一座は旅立つ。一高生も慌てて後を追う。一高生が一座を追い越そうとした時に、一座の栄吉が声をかけてきて、一緒に話しながら歩くことに。しかし途中、栄吉たちが山道を行こうとする。理由を聞くと「物乞い旅芸人村に入るべからず」という看板が立っていた。栄吉は一高生と一緒だということを村の中を歩いていく。彼らは下田まで一緒にいくことにする。

 安宿に着き、踊り子は一高生にお茶を入れるが、こぼしてしまい、家族に叱られる。栄吉は一高生を宿へ案内する。そこはしっかりとした宿だった。

 踊り子は聞いていた酒場に行き、きみに会おうとするが、店の女たちはそんな女は知らないと言う。踊り子は仕方なく宿へ帰る。

 その夜一座はお座敷に呼ばれる。一高生が泊まっていた隣の宿だった。一高生は彼らのことを窓越しに眺めるが、酔客が踊り子に絡み出したのを見て、思わず乗り出して見た時に窓の外の灯を落としてしまい、慌てて部屋に引っ込む。

 翌朝栄吉が宿に来て一緒に朝風呂に入る。その時、川向こうの温泉に女たちが入っていると聞き、そちらを眺めると、踊り子が裸のままこちらに向かって手を振っているのを見て、まだ子供なんだと安心する。

 その夜一高生が他の客と碁を打っていると一座が宿に来る。彼は一座に宿で休むように声をかける。部屋に来た踊り子が碁を打てると言うので打って見ると、五目並べだったが、彼は一緒にすることに。

 翌朝は早くに旅立つ約束のため、一高生は一座の宿へ行くが、彼らはお座敷がかかりもう一泊することになったと聞かされ、彼ももう一泊することに。栄吉と散歩をし、彼らの話を聞く。

 踊り子は連れていた犬が行方不明になり、探しているうちに、病で伏せているきみと出会う。彼女にお守りを渡すが、彼女は重い病気にかかっていた。

 その夜、栄吉夫婦はお座敷に。一高生が宿を訪ねると踊り子たちは鳥屋に鍋をご馳走になり、本を読んでもらっていた。鳥屋が去ってしまった後、一高生は踊り子に本を読んであげる。

 そして下田へ向かう。一高生が一人先を歩くと踊り子だけがついて来た。そして二人は休憩をしながらお互いの話をする。

 一行は下田に着く。踊り子は一高生と活動写真に行く約束をするが、母親がお座敷を入れてしまい、行くことができなくなる。一高生は栄吉に明日早朝船で東京へ戻ることを告げる。

 翌朝早朝、栄吉が見送りに来る。しかし海岸へ行くとそこには踊り子がいた。栄吉が切符を買いに行っている間に彼は踊り子に簪をもらう。そして船に乗り去って行くが、踊り子は港からいつまでも手を振っていた。

 

 川端康成の名作の映画化。というか、昭和のこの頃は、売れっ子がこの映画に主演するのが定番だったみたい。伊豆の踊り子wikiには、大物女優の名前が並ぶ。

 しかし正直初めてちゃんと見た。原作も読んだことはないので、あーこんな話なんだと初めて知った。冒頭、学生姿の三浦友和が伊豆の道を歩いているのを見て、ここに石坂金田一が歩いていても違和感はないな、と思ってしまった。この映画は大正時代末期が舞台、先日見た「女王蜂」の学生仲代達矢たちが伊豆月琴の里を訪れたのが昭和7年設定だから、だいたい同じ。でも金田一が月琴の里に行くのはその20年後だった(笑

 山口百恵の初主演作、ホリプロ東宝提携作品らしい。相当力を入れていたんだろうなぁ。ラスト近くで出て来る謎の学生は公募で選ばれた本当なら山口百恵の相手役をするはずだったらしい。なんとも昭和らしいエピソード。

 ストーリーは若い二人の恋愛もの、しかし身分の差についてはハッキリと描かれていて、悲哀ものと言った方が正しいか。主演二人の演技はともかく、ラストの別れはやはり切ないし、その後の踊り子が酔客に絡まれそこでストップするラストシーンは、踊り子のこの先を案じていてもっと切ない。

 当時のことはよくわからないが、デビュー間もないアイドルがこんな切ない恋愛ものの映画に出れば、映画もヒット、本人の人気も爆発する時代だったんだろうなぁ。

 

伊豆の踊子 [DVD]

伊豆の踊子 [DVD]

  • 発売日: 2014/08/02
  • メディア: DVD