鬼平犯科帳 第6シリーズ #05 墨斗(つぼ)の孫八

 第6シリーズ #05 墨斗(すみつぼ)の孫八

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 老人と浪人2人が1ヶ月前の盗みで手に入れた金を分けようと隠していた千両箱を開けにやってくる。しかし中身は石だった。騙されたと思った浪人たちが老人を斬ろうとし、老人は逃げる。老人は橋のたもとで休んでいたおまさにぶつかり、二人は橋の下へ転げ落ちる。そこへ浪人たちが探しに来たため、老人はおまさに静かにするよう頼む。

 浪人が去った後、老人は去ろうとするところをおまさが声を掛ける。老人は墨斗の孫八、大工をしていた孫八は墨斗で盗みに入る家の図面を描いたことから墨斗と呼ばれていた。おまさは孫八を五鉄に連れて行く。おまさは7年前、孫八の元で引き込みの仕事をしていた。孫八は浪人に命を狙われている、という話をした後、倒れてしまう。

 おまさは孫八の件を鬼平に報告する。孫八は幼い頃家族を亡くしており、特に両親が苦しんで死ぬのを見ているため、この世に未練はない、と話す男で、盗人の三カ条を守って来た親分だった、と話す。鬼平はそんな頭を売るのは辛いだろうと話すが、おまさはその峠は乗り越えたと答える。彦十が孫八のあとをつけたが、寝ぐらは突き止められなかった。鬼平は、おまさが翌日孫八と五鉄で会うことを確認する。また孫八が盗みの際にどんな太い閂でものこぎりで一気に引き切るということを聞く。そしてそのノコギリをどこから手に入れるかを忠吾に調べさせる。忠吾は大工の長五郎に話を聞きに行き、目黒の松蔵の名前が上がり、早速見張ることになる。

 孫八は店で酒を飲みながら、庭に見える菊が蕾のまま立ち枯れしているのを見ていた。店の女中おきよに声を掛ける孫八。姉のことを聞くと、おきよの姉は、芳太郎とともに来もしない男を待っているとのこと。孫八はおきよに土産の足しに、と小遣いを与える。

 舟宿志ぶき屋で浪人2人が宇兵衛と酒を飲んでいた。浪人たちは孫八の金を先に盗んでいたのだった。そして宇兵衛から孫八殺しを依頼されていた。彼らは船に乗っている孫八を見かける。

 おまさは五鉄で孫八に伊三次を紹介する。孫八は次の仕事のため人を集めていた。伊三次は盗み先を聞く。孫八は日本橋の茶屋問屋鶴屋を襲うと話す。おまさがあの店を狙うのは大変だと話すと孫八は大工時代に携わった店だと話し、図面も持っていた。

 五鉄から帰る孫八を彦十がつける。孫八は浪人たちに襲われるが、そこへ鬼平が助けに入る。孫八は鬼平を家に誘い食事をご馳走する。孫八は息子芳太郎が2歳であること、岡崎の旅籠で知り合ったお茂という女に産ませた子であること、自分が盗人の頭であること、を話す。そして鬼平を盗みを助けるよう頼む。

 一方、彦十は孫八を襲った浪人たちが舟宿志ぶきやであることを役宅に報告する。

 鬼平は木村仲右衛門として、孫八と酒を酌み交わす。二人は意気投合し、酔いつぶれるまで飲み明かす。翌朝、鬼平は買い物をし、朝ごはんを馳走になって役宅へ帰る。そこへおまさと伊三次が来るが、鬼平は孫八の仕事を助けること、今夜の五鉄の打ち合わせに自分も出ることを話す。

 その日、巳の刻に盗賊改方は志ぶき屋を取り囲み、浪人たちを捕らえる。

 夜五鉄で孫八、鬼平、おまさ、伊三次が顔合わせをし、孫八から盗みの計画を聞く。

 10日後、鋸鍛治松蔵の元に不審な人物が来て特別あつらえの鋸を持って帰ったとの報告が入る。そして孫八の盗みが決行される。おまさと伊三次は孫八の用意周到なやり方に感心する。そして鬼平が孫八を密偵にするつもりなのでないかと推測する。

 そして一味が店に侵入し、蔵の閂を鋸で引こうとしているところで、鬼平が名を名乗り一味を捕らえる。そんな中、孫八は倒れてしまう。鬼平は孫八に長谷川平蔵と名乗るが、孫八はそれを冗談だと受け入れず、帰ったら一杯やろうと話しながら死んでしまう。

 鬼平は雪空の日、五鉄で彦十やおまさと酒を飲みながら、孫八とのことを後悔していた。孫八を担いだこと、鋸に油を塗ったことなどを悔やんでいた。そこへ伊三次が来て、芳太郎の叔母に当たるおきよのことを報告する。後日おまさが金を持っておきよに会いに行く。そして芳太郎の父の知り合いだと言い、岡崎の姉さんに届けてくれと話す。おきよはもしかして芳太郎の父とは孫八おじさんのことかと聞くがおまさは何も言わずに去って行く。

 

 鬼平はここまで90話ほど見て来たが、この話は一番わかりにくい?話だったように思う。話としては年老いた盗人のお頭が最後の仕事を思って仕事をする、そこに鬼平までもを助っ人としようとする、というこれまでにもよくあったパターンと言えるが、話を追っていくとよくわからないことだらけだ。

 

 不明な点その1。冒頭、金を分けようと千両箱を開けると中は空(石が入っていた)。実は浪人者2人〜助川、法月〜がすでに奪っていたから。というのは話の中で説明があるが、ではその後浪人と酒を飲んでいた宇兵衛って誰だ?しかもこの男は孫八の命まで狙っている。

 どうしてもよくわからなくて、ネットで調べたが、原作ではこの3人は孫八とかつて共に仕事をしたが、その際に裏切って金をネコババしていた、となっているようだ。しかしドラマの中ではそれが描かれておらず(千両箱の中の金をネコババしたのはわかるが)、ドラマを見ているだけでは関係性がよくわからない。

 

 不明な点その2。店で酒を飲んでいた孫八が菊が立ち枯れしているのを店の女中おきよに見せるシーンがあり、その後二人の会話がなされるが、この二人が実は血縁(おきよ=孫八の義理の妹)だとわかるのは最後の最後。ある程度想像はついたが、その1の悪人3人のこともあり、なんだかよくわからない人が次々と出て来て、この店のシーンを見ているときは、なんだかなぁと思ってしまった。

 

 不明な点その3。その2で書いた店のシーン、最後に孫八が店から去っていくが、店の外にいた子供達の横を通って舟に乗ろうとするところで、一瞬、不自然な孫八のアップがある。しかしその意味がよくわからない。アップの後に、遊んでいる子供達をアップにすれば、孫八が子供のことを思ったというシーンにもなるだろうが、あまりに不自然なアップだった。編集のミス?

 

 鬼平が盗人や悪人の手助けをする態で話が進むのは、よくあるパターンで、近いところでは第5シリーズの「蛙の長助」などがそうだった。最後にその相手が突然死んでしまうところもそっくり。だから話の違いを出すために、こんな展開にしたのかなぁ。そしてラストの鬼平の後悔ぶり。確かに一緒に酒を飲むシーンが長く、二人ともタメ口(笑 で怒鳴りあっていたのは珍しい。しかし上記した不明な点が多かったためにそちらが気になって、ラストの鬼平の悔やみっぷりがすんなり受け入れられなかった。そういう意味では残念な話かなぁ。