シャーロック・ホームズたちの冒険 田中啓文

シャーロック・ホームズたちの冒険 田中啓文

 久しぶりに新しい作家さんの本を読んで大当たりだった。

 様々な有名人、事件などのパロディ短編集。タイトルにホームズの名が入っているが、ホームズ物は1本。他に忠臣蔵ヒトラー小泉八雲、ルパンなど。

 ホームズ物はホームズとワトソンの会話が『いかにも』な会話であり、事件に入って行く過程も『いかにも』であり、昨年「聖典」を読んでいる自分にも違和感なく入り込めた。3つの事件が発生するが、2つ目までのところでワクワクし、3つ目の事件で「?」となり、最後の解決を読んで「あれれ」となる展開なのは残念だったが。

 ヒトラー小泉八雲については、よく知られている点がそのまま生かされていてなかなか。最後のルパンについては賛否両論ありそうな展開。

 しかしこの本で感動したのは忠臣蔵。史実を基にしていると思われるが、一点のみ?この小説のために創作した部分から、忠臣蔵の討ち入りのメインである吉良上野介の死を見事な謎に変えてしまい、それを鮮やかに解決している。鯨統一郎さんのデビュー作「邪馬台国はどこですか?」を彷彿とさせる読み応えだった。

 続編があるということで早速読みたいと思う。このシリーズ以外にも田中啓文さんの作品は読んでみたい。