アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜

●269 アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜 2013

 ティムはちょっと変わった家族と暮らす青年。21歳になる年の新年に父から一族の男はタイムトラベルの能力を持つ、ただし過去へ行けるのみ、との話をされる。信じられないティムは、昨夜のニューイヤーパーティに戻り、キスできなかった女友達にキスをすることで能力のすごさを実感する。父から能力を何に使うか問われ、金のためと答えるが父から諭され、愛のために使うことにする。

 夏休みに妹キットカットの彼氏ジミーのいとこのシャーロットが家に2ヶ月滞在することに。彼女に惚れたティムは能力を使うが、恋人になることはできなかった。彼は能力で愛は手に入らないことを知る。

 ティムは弁護士となるためにロンドンへ出て、父の友人で脚本家のハリーの家に住むことに。悪友ジェイの誘いで行ったレストランでメアリーと知り合い、仲良くなるが、帰宅するとハリーが芝居の出来がよくなく落ち込んでいた。ティムは能力を使い芝居を成功させる。しかしそのせいでメアリーとは出会っていなかったことになる。彼はメアリーが好きなモデルの写真展へ通い、メアリーと出会う。しかしメアリーには恋人がいたため、二人の出会いを阻止するために能力を使い、自分がメアリーと出会うことに。そして彼女で家で結ばれるが、sexでも能力を使う。

 二人は付き合い始め、ティムはメアリーの両親とも会うことに。その翌日、ティムは友人と国立劇場に行き、シャーロットと再会する。彼女から誘われ、改めてティムはメアリーの存在に気づき、二人は結婚することに。結婚式のスピーチでもティムは能力を使う。

 二人に娘ポージーが生まれる。ティムは幸せな生活を送り始め、能力を使うことはなくなった。ある日家に来るはずのキットカットが事故に遭う。ティムは能力を使い、キットカットの事故を回避させるが、その影響で、娘が息子になっていた。父に相談し能力により変化することもあることを知る。ティムはキットカットの事故はそのままとし、キットカットが恋人ジミーと別れるように勧める。

 父のガンが発覚、ティムは父と話し、1日を2度経験するようになる。

 メアリーから3人目の子供が欲しいと言われる。子供が生まれるともう過去へ戻る能力は使えなくなり、それは父とも会えなくなることを意味していた。しかしティムはメアリーの希望を聞き入れる。そして父と最後の対面をし、父の希望でまだティムが小さかった頃の時期に戻り、浜辺を散歩する。

 そして皆の生活は普段通りに戻って行き、ティムは1日は1度だけ経験する生活をし、その大切さを感じ始めていた。

 

 全く知らない映画だった。タイムトラベルものだが、上手い脚本だったと思う。21歳となりタイムトラベルの能力があることを知らされた青年が能力を使い、恋をしようという話でスタート。通常、タイムトラベルものは、1回のタイムトラベルでそれなりのストーリーが進むことになることが多い。しかしこの映画では、タイムトラベルを頻繁に使い、映画前半は能力を使ったコントのような場面の連続。タイムトラベルをコメディのために使うのか、と思って観ていた。

 タイムトラベルものは、パラレルワールドの問題や同時刻に同一人物が2人存在する問題など、言い出したらキリがないほど、設定の難しさがあるが、この映画では前半をコメディタッチにすることで、この問題をすっ飛ばしてくれている。

 映画中盤、主人公は恋を成就させ結婚、子供も生まれ、幸せな生活を送り始めるが、ここで妹の交通事故が発生し、映画の展開が変わってくる。主人公はタイムトラベルにより妹を交通事故から救おうとするが、それが自身の生活に影響が出ることを知る。そして父の病気。

 映画前半でコメディのように見せながら、何度でも人生をやり直すことができていた主人公が、能力を持ってしてもやり直しが効かないことに気づくことが映画のテーマだろう。いつでも会えたはずの死んだ父親にもう会えなくなるシーン。普通の人間には当たり前のことだが、この映画の主人公は自らそれを選択しなくてはいけない、というのが逆に能力があるから辛い。

 タイムトラベルものは、脚本が上手いと傑作になる。それを証明した1本。