朝虹ノ島 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●朝虹ノ島 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第10作。季節は夏。大力おちか失踪、因幡鳥取藩騒動〜桜子との出会い、江戸城石垣修理津山藩〜今津屋との伊豆への旅(3話分)。

 磐音が巻き込まれる事件がとうとう豊後関前藩以外の藩の騒動までいたることになる。鳥取藩、津山藩鳥取藩との絡みでは、織田桜子との出会いがあり、おこんがやきもきすることに。また江戸城石垣の修理と津山藩が命じられ、その石の切り出しに絡み、津山藩へ今津屋が金を貸すこととなり、その関係で今津屋と伊豆へ行くことに。久しぶりに品川、竹村の3名そろい踏みでの仕事となった。

 10作ではこれまでにないトラブルも発生。磐音の包平が刃こぼれし研ぎに出すことになる。そこで天神鬚の百助と出会う。また、伊豆での6000両盗難事件では品川が怪我を負うトラブルも。重傷ではなく無事江戸に帰ることになるのだが…

 トラブルではないが、5章構成のうち後半3話が伊豆の旅に当てられているのも珍しいか。これまでのシリーズでは1章ごとに事件が解決するのがほとんどだった。それだけ事件が大きくなってきているということか。それとも作者がエピソードを膨らませて書き始めたということか(笑 これまで登場はしていたが、仕事としてのエピソードがなかった上様御側衆速水左近が、磐音を助ける場面も出てくる。

 10作目として江戸や豊後関前藩以外でも磐音が活躍するよう、方向転換が図られるのか、今後の展開に注目かな。