ガス燈

●275 ガス燈 1944

 ロンドン、ソーントン広場側の住宅で絞殺事件が発生、事件は未解決のまま。叔母アリスを殺された姪のポーラは事件を忘れるためにイタリアのグアルディ先生の元へ。先生は叔母の親友だった人だった。叔母は歌手でポーラも歌手となるために先生の元へ行くのだった。

 しかしポーラは恋に落ちてしまう。相手は先生の元でピアニストをしていたグレゴリー。ポーラはコモ湖へ旅に行くが、列車の中でスウェイツ夫人と知り合う。コモ湖ではグレゴリーがポーラを待っていた。2人はホテルで過ごす。グレゴリーはロンドンの広場側で暮らしたいと話し、ポーラは叔母アリスが残してくれたソーントン広場側の住宅で暮らすことを提案する。

 2人は一緒にソーントン広場側の住宅で暮らし始める。グレゴリーはポーラが事件のことを思い出さないように、アリスの持ち物は屋根裏部屋にしまってしまうことを提案する。

 ポーラはアリスの持ち物から楽譜を発見する。その中にバウアーから叔母に宛てた手紙が見つかるが、グレゴリーが手紙を奪い取る。

 グレゴリーは料理人エリザベスの他に新しいメイド、ナンシーを雇う。彼女には妻を煩わせないように注意する。グレゴリーは母の遺品のブローチをポーラに与え、その後2人はロンドン塔の見学へ。しかしその最中にポーラはもらったはずのブローチがバッグにないことに気づき慌てる。家に帰った2人、ポーラはブローチを失くしたことをグレゴリーに告白するが、彼は気にすることはないと話す。ポーラは夜、家のガス燈が突然暗くなったことに気づき、メイドに聞くが、家の中には他に誰もいなかった(ガス燈は他の部屋で誰かが使うと一時的に暗くなることがある)。

 2人の屋敷のことを近所に住むスウェイツ夫人に尋ねる男がいた。彼はブライアン。ロンドン警視庁の刑事だった。夫人はポーラがあまり外出しないことなどを彼に話す。ブライアンは10年前のアリス殺害事件のことを調べていた。彼は子供の頃アリスと会ったことがあり、事件に興味を持っていた。彼は上司に事件のことを聞き、殺人事件とともに宝石が消えていること、ある筋から捜査を打ち切りにされたことを聞く。

 ポーラとグレゴリーの仲はおかしくなり始めていた。ポーラはメイドナンシーの態度が気に入らなかった。グレゴリーはポーラを病気扱いし、スウェイツ夫人が面会に来てもポーラを会わせなかった。そのことを怒るポーラだったが、グレゴリーはそんなオーラを劇場に誘う。喜ぶポーラだったが、グレゴリーはその時、壁の絵画が1枚なくなっていることに気づき、ポーラを責める。しかしポーラに覚えはなかった。メイドの2人も知らず、ポーラは絵画が隠されている場所から見つける。グレゴリーは覚えがないのに、ありかは知っているのかと詰問するが、ポーラは前にも同じ場所にあったからと答える。グレゴリーは劇場に行ける状態ではないと話し、ポーラは悲しむ。グレゴリーはポーラに寝るように勧め、自分は作曲のために外出する。

 ブライアンは音楽会への招待状を受け取り、ポーラに会えることを期待し出席する。グレゴリーは同じ招待状を無視しようとするが、ポーラが出席を楽しみにしているために夫婦で参加することに。ポーラは音楽を聞き楽しんでいたが、グレゴリーの時計がポーラのバッグから見つかったことからパニックに陥り、帰宅することに。家に着いたポーラは叔母の楽譜の中から手紙を見つけたことを語り出すが、グレゴリーはそんなことはなかったと言い、ポーラはさらに混乱する。グレゴリーはさらにポーラの母も精神的な病を持っていたと話す。ポーラはショックを受ける。

 そんな中グレゴリーは外出する。その彼をブライアンと警官が見張っていた。

 ブライアンはポーラの家周辺の図を描き、グレゴリーの謎の行動に着いて考えていた。ポーラの家周辺を見張っていた警官がブライアンにグレゴリーの行動について、またメイドナンシーから聞いた話を報告する。

 翌日夜、グレゴリーが外出したことを確認したブライアンはポーラの家を訪れ、強引に彼女に会いに行く。そしてポーラの身の回りで起きている不思議な現象について聞き、グレゴリーの部屋の机を調べる。そこから例の叔母アリスに宛てた手紙が出てくる。ブライアンはポーラにグレゴリーの正体について話す。

 その頃屋根裏部屋で宝石を見つけたグレゴリーが戻ってくる。彼は自分の机が強引に開けられたことに気づき、ポーラを問い質すが、そこへブライアンが現れる。2人は格闘し、グレゴリーは捕まる。ポーラが彼と2人で話したいと言い出し、2人だけで会話が始まる。

 

 心理サンスペンスの古典の傑作。今なら夫のモラハラパワハラと言われて当然の状況だが、この当時ならたとえ病気持ちの妻であろうとこのぐらいのセリフを夫が言うのは当たり前だったのか。

 愛する夫のため、最悪の記憶の残る屋敷へ引っ越し、幸せ絶頂の状態から、夫の心理的な追い詰めにより変化して行くバーグマンが見事。高校生の時にカサブランカを見て以来のバーグマンファンだが、虚ろな表情からラストのキレ気味までの変化はアカデミー賞に十分値するんだろうなぁ。

 グレゴリーが事件のあった住宅に住みたがる点、遺品から見つかった手紙を奪い取る点、など最初から怪しいところ満載の夫だったのは、今から見るとちょっと残念かな。もう少しこの辺りの見せ方を工夫すれば、ラストで「えっ!」という展開になったかもしれないのに。まぁその辺りは後の映画が参考にしているんでしょう。