驟雨ノ町 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●驟雨ノ町 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第15作。季節は夏。日光社参の後日談からスタート。父正睦と磐音とおこんと金兵衛での船顔合わせと利高粛清、幸吉暑念仏と11年前桔梗屋火事焼死事件、鰍沢の満ヱ門護送〜富士川での死闘、夜盗野猿秀太郎一味今津屋襲撃。

 前作で日光社参が終わり、豊後関前藩に帰る正睦がおこん親子と会うことに。事情を知らなかった金兵衛の言葉が可笑しいが、ほのぼのとした場面だった。

 磐音シリーズの魅力の一つに時間の経過があると思うが、宮戸川に奉公する幸吉がうなぎの捌きが身につかず店から逃げ出してしまう話もこの15作を通しての事件となっている。5章でやっと幸吉が戻ってくるが、幸吉も磐音も今後この件で変わっていくだろうことが想像できる。

 もう一つ15作での見所は、盗賊のお頭が2人も登場することか。鰍沢の満ヱ門とその子分の争いも、野猿秀太郎一味が今津屋を襲う一連の話も面白かった。鬼平を彷彿とさせる話だが、鬼平と異なるのは、鬼平が悪を成敗するのが目的とする一方で、磐音はあくまで町方の手先ではなく、自分の思うところに従って悪人と対峙しているところか。満ヱ門の子分の話に乗って、結果的に満ヱ門を死なせてしまうあたりは鬼平では考えられない展開だが、金を手に入れることを優先する磐音なら十分アリだろう(笑

 日光社参も一段落、磐音とおこんの件も一段落。さて話は今後どんな展開を見せていくのか。盗賊との絡みが増えるのか、全く別の展開が待っているのか。