紅椿ノ谷 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●紅椿ノ谷 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第17作。季節は秋から冬へ。今津屋吉右衛門祝言〜速水左近媒酌人〜三河万歳騒動、佐々木道場改築話、冥加樽騒動〜指田精左衛門VS玲圓、磐音おこん法師の湯道中〜殺し屋丹下屋笠左衛門、指田精左衛門義弟相馬泰之進との戦い。

 前作で書いたように、奈緒の件が一段落し、磐音シリーズの今後の方向性がどうなるかと思って読んだが、まずは今津屋の祝言からスタート。その席で語られる磐音への感謝の言葉がここまでのシリーズの長さを物語っていて和む。

 次は佐々木道場改築の話。意外な方向に話が進むが、ここでも祝言の場と同様、磐音ネットーワークとでも言える人の輪が力を発揮するとともに、日光社参ぶり以来に玲圓が斬り合いに臨む。

 そして最後はおこんと磐音の温泉旅。前作までの一連の大仕事が終わっておこんが元気をなくしたという設定はちょっと強引な気もしたし、江戸時代に結婚前の男女が旅に出るというのもおそらく設定的には無謀だと思われるが、そこはそれ、磐音シリーズなので(笑 2人がのんびりと旅をする姿は、奈緒の件が一段落したこのタイミングで必要なイベントだろう。しかしタダで済むわけもなく、なんと殺し請負まで登場。ここのところ、盗賊が何人か出てきて鬼平のような捕物めいた話が出てきたと思ったら、今度は同じ池波正太郎の仕事人のような話まで出てきた(笑

 この17作を読み、ここまで十分すぎるほどのサブキャラクターがおり、磐音とおこんの祝言も先には待っていて、展開には困らないんだなぁと改めて思った。