鯖雲ノ城 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●鯖雲ノ城 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第21作。季節は秋から冬。磐音おこん辰平が豊後関前藩へ到着と早朝洲崎浜での格闘、8年ぶりの中戸道場と父正睦襲撃、今津屋へのお礼品選びと友の墓参り、東源之丞襲撃負傷と中津屋捕縛、磐音おこん仮祝言と辰平の旅立ち。

 前作での船旅を終え、いよいよ磐音とおこんが関前藩へ到着し皆に大歓迎される。と同時に久しぶりの関前藩の現状が描かれる。中戸道場の没落ぶり、藩内での怪しい動きなど。

 見せ場ポイント1つ目は、皆の歓迎ぶりか。坂崎家の家族はもちろん、使用人や道場の仲間など、感激ぶりは半端ない。

 2つ目は、それでも起きる不穏な動き。それに対する磐音の活躍ということになる。到着前から関前藩での怪しい動きを知らされていた磐音が、父正睦と敵を倒すことになる。藩の一部の者と商人中津屋を第4章で見事に成敗する。

 3つ目は、やはり磐音が友の墓参りをする場面。このシリーズのきっかけとなる事件で失った友の墓を参る磐音とおこん、そしてそこに飛んでくる三匹の秋茜。

 蛇足だが、巻頭に関前藩の地図が掲載されており、話の中で明示される場所の位置関係がわかりやすくなっているのは、非常にありがたい。いつもの江戸とは違い、あくまで仮想の藩関前藩のための処置だと思うが、さすがに読者思いであると感じられる。

 また、旅を共にしてきた辰平が1人修行の旅へ出ることに。2年ほどで江戸へ帰るというセリフもあり、この先成長して現れる場面もあるのか。ちょっと楽しみである。