万両ノ雪 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●万両ノ雪 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第23作。季節は師走から年末年始。6年前麹屋家事と夜盗万両の大次郎、大次郎の島抜けと柳次郎笹塚を助ける、大次郎捕物と磐音江戸へ帰還、元日の道場破りと白犬白山、磐音佐々木道場跡取り披露。

 最初の数ページを読んで、本もしくは巻数を間違えたのかと思った。与力笹塚の回想から始まるのは良いが、江戸へ帰って来るはずの磐音のことに一言も触れないためだ。巻数や本のタイトルを確かめ読み進めたが、磐音の名前が出てきたのは、90ページを過ぎたところだった。

 前半3話が6年前の事件から始まる盗賊の捕物話。そして磐音がまさに芝居もどきの登場。映像化されるなら一番の見せ場となる場面だ。

 今作は見せ場というよりも、エピソードを確認しておいた方が良いかも。

 第4章で元日に新生佐々木道場に道場破りが現れるが、奴らが釣れていた白犬が道場で飼われることになりそう。ここに来て新キャラが犬とは(笑

 江戸へ戻った磐音が関係者に挨拶に回る場面も楽しいエピソードの一つ。さらに第5章で道場の跡取りとして披露されるが、こちらはメンバーは豪華だが地味に行われる。そこに家基から磐音への贈り物が披露される。磐音と将軍家の繋がりはこれからも何かあることを予感させる。

 もう一つ。今作の締め、第5章の結末で見せる今津屋由蔵と小僧宮松のセリフも忘れてはいけないだろう(笑

 

 さらに今作には、佐伯泰英氏によるあとがきが初めて掲載されている。体調を崩し今作の発売が延期されたことを受けてのあとがきで、しかも氏のデビュー当時に関連する闘牛士取材のエピソードが語られる。磐音シリーズに多く書かれる斬り合いシーンと闘牛士との関わりがわかり興味深い。