紅花ノ邨 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●紅花ノ邨 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第26作。季節は夏から秋へ。磐音山形へ旅立ちと福島飛脚屋での騒動、岩谷観音巡りと野伏との戦い、前田屋押し込めと長源寺玄拳和尚との出会い、久保村双葉と紅花奉行播磨屋三九郎、前田屋内蔵助救出と奈緒との再会。

 読本(24作と25作の間に刊行)後、2冊目となる26作。前作に続き、24作で盛り上がった田沼意次の5人の刺客話は今回も休止。読本の佐伯さんインタビューでご本人が言っていた「近々奈緒が…」とのセリフ通り、山形に行った奈緒の身を案じ、磐音が山形まで出張る1冊。

 久しぶりの磐音奈緒の再会を期待していたが、第5章で顔をあわせる2人の時間の短いこと短いこと。残念。しかしそれを補うようなその直前の前田屋内蔵助のセリフが良かった。

 一方、磐音おこんが関前藩を訪ねた1冊のように、磐音が江戸を不在にしていても、江戸の話は進む。今回はおえんとおこんが三味線、端唄を習うエピソード。前作にもあったが、江戸の女性たちが主役となるエピソードが増えそうな予感。

 メインの話で重要な役割をする「紅花文書」だが、これがよくわからなかった。ネットでもその説明がされているものはないし。そういうものが実在したことまではわかったが…。

 一方で山形藩での出来事がまさに豊後関前藩騒動と同じであったのはよくわかった。実際藩主の留守に悪巧みをしていた国家老は多かったんだろうなぁ。水戸黄門などで定番の悪役だし(笑