石榴ノ蠅 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●石榴ノ蠅 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第27作。季節は秋。山形からの帰り千住掃部宿での争いごと、利次郎のスランプ、常陸麻生藩新庄家内紛と刀研ぎと新刀忠広、竜神の平造一味捕物、家基お忍び船遊び。

 前作で奈緒を助けるために山形へ行った帰り道から話がスタート。常陸麻生藩新庄家内紛を知ることになるが、こちらは御側御用の速水が動きあっさりと解決する。

 今作でのポイントは3つ。

 1つ目は道場の若手利次郎が磐音の厳しい稽古でスランプに陥り、それを霧子が手助けしてスランプから脱出する、というエピソード。これはデブやせ軍鶏とあだ名された片割れ利次郎の話だが、これが次作に繋がっていく模様。

 2つ目のポイントは、久しぶり与力笹塚案件(笑 またも佐渡金山がらみで江戸から罪人を送るが、その一部が逃げ出して…という前にも似たようなケースがあった話。しかし今回は、磐音が既に佐々木磐音となっており、笹塚も助っ人として磐音に頼みづらい状況。しかもおこんにも釘を刺される、というオチまで付いていたが、人の良い磐音が当然のことながら助っ人として捕り物に参加する、という話だった。

 最後は、こちらも久しぶりに登場となる、家基がとうとうお忍びで街へ出て来て、宮戸川の鰻を始め、色々と江戸の町を堪能するという話が最終章で描かれる。当然田沼意次一派も動くが、それの裏をかいて…という話になっている。

 前作での磐音と奈緒の再会があっさりしたものだったのを受けての今作となるが、様々な登場人物が山形から帰った磐音に再会の状況を問いただす場面がある。磐音は多くを語らないが、周りの人間が奈緒の気持ちを含め、色々と語る。まるで著者の言い訳のように(笑

 田沼からの刺客5名の話はまだしばらくお預けなのか?笹塚も再登場して来たし、道場の跡継ぎとなっても、磐音があちこちで活躍する状況は変わらないようだ(笑