照葉ノ露 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●照葉ノ露 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第28作。季節は秋。設楽小太郎仇討騒動上総上湯江へ、北条湊での仇討、利次郎旅支度、竹村武左衛門磐城平藩門番へ、竹村家引越と4人目の刺客愛甲次太夫との戦い。

 非常に珍しい始まりだった。当然のことながら前作までとは全く関わりのない設楽家の仇討ち騒動に磐音が巻き込まれ、上総へ出向くところから話が始まる。その理由が説明され、なんとも悲しい結末を迎えるエピソードだった。

 一方、前作でエピソードの主役となった利次郎がとうとう父親と土佐への旅に行くことになる。送別会やお別れの勝ち抜き戦があり、最後は霧子との仲も進展ありか。

 もう一つ、ファンが懸念していた?竹村武左衛門の今後がいよいよ決まった。磐城平藩の門番隣、武士であることを捨てることに。さらに磐音が身許引受人となったため、磐音に関係なく磐城平藩との関係ができることに。

 最後はやっと5人の刺客の4番目が登場、久しぶりに刺客との戦いに。これで残りは1人。城中の家基の元へ剣指南に出かける場面もある。家基とも、旅に出る前日の利次郎とも、磐音は真剣で稽古をする。さすがに緊張感がある場面だった。

 ちょっとした話題としては、同心一郎太と幼馴染菊乃の恋も描かれる。恋に奥手の一郎太がやっと掴んだ幸せということで微笑ましい。このシリーズの魅力は、時がしっかりと流れている点。門下生が成長したり、仲間たちの恋があったり、武左衛門はちゃんと就職したり(笑 

 そう言えば、前作だったか、金的銀的の朝次親分と亡くなったおきねの7回忌となる、という会話があった。このシリーズはだいたい4、5冊で1年が経過する。確かに6年ぐらいは時が進んでいるのか。そう考えると感慨深い。