あいつと私

●295 あいつと私 1961

 浅田けい子は女子大生。同じクラスの黒川三郎が授業中「小遣いで夜の女性を 買った」と発言。クラスの女性から猛反発を受け、その後三郎はプールに落とされてしまう。服が濡れてしまった彼は、女性たちから女性用の服を借りるが、これでは家に帰れないため、浅田の家で父の服を借りることに。

 浅田の家では男性が女性の服を着ているのを見て皆驚くが、その後三郎は浅田の家で昼ごはんをご馳走になる。けい子の家族は三郎のことを色々と尋ねる。三郎は父は母のマネージャーで、母は美容師モトコ桜井だと話すと、浅田家の女性は皆三郎の母のことを知っていた。

 けい子は貸した服を返してもらうために、三郎と一緒に彼の家に行き、三郎の父と母が夫婦喧嘩をしているのを目撃、三郎の母親が自由奔放な生き方をしていると聞く。 

 けい子は女生徒仲間と昼ごはんを食べていた。その時仲間の1人バンビが結婚することを聞く。そして三郎とけい子たちはバンビの結婚式に出席する。披露宴が終わり、家に帰ろうとするが、式の会場のそば、国会付近で安保デモが行われており、三郎の親友金沢がデモに参加しようとする。デモに興味を持っていたけい子も参加しようとするが、三郎は母親に連絡をしておいた方が良いと言われ、けい子は母に連絡する。

 結局デモに参加したのは三郎と金沢だったが、金沢が怪我をしてしまう。病院に行き治療をした後、金沢はデモに参加していたはずの元村の家に行こうと言いだし、3人は元村の家に。

 そこで4人で会話をしていると元村の仲間の金森が息も絶え絶えにやって来る。事情を聞くと金森は元村が尊敬している岩渕たちに乱暴されたと話す。それを聞いた元村は激怒し金森を非難し始める。三郎は2人を落ち着かせる。

 三郎は金森が立ち直るためには、自分の母と同じように仕事を持つことが必要だと考える。けい子の家では帰ってこないけい子のことを心配していたが、三郎が彼女を家まで送り届ける。

 夏休みになり、三郎とけい子たちは友人の実家をめぐる旅行をし、最後に三郎の家の別荘へ行く。その夜、三郎の母モトコが男と従業員松本を連れてやって来る。松本がけい子に三郎の女の好みの話をする。母親たちは差し入れを置くと帰っていった。けい子は松本のことを三郎に聞く。三郎は正直に答える。何不自由なく育てられた三郎は、思春期の頃性の相手として松本と一緒に過ごした、と。それを聞いたけい子は驚いて外へ飛び出して行く。三郎は彼女を追いかけキスをする。

 翌日別荘に電話があり、モトコが昼ごはんをご馳走すると連絡してくる。皆で出かけ、けい子は松本と話をし、松本をぶつ。

 大学に帰った三郎たち。三郎は母親の誕生日にけい子を連れて家に帰る。家の前に男が立っていて、三郎が話すと彼はモトコの旧友だった。彼は阿川といい、家に迎え入れるとモトコがご機嫌で出迎えるが、阿川と2人きりになると、何をしに来たのかと問いただすが、阿川はとぼける。

 三郎の家に金森がやって来る。彼女はモトコの元で勉強をしていたのだった。

 誕生日パーティの場で、アメリカでホテル経営をしている阿川は、自分の跡取りとして三郎をアメリカで勉強して欲しいと話をする。しかしモトコは猛反対する。その夜、けい子は1人酒を飲んでいるモトコを見かけ話をする。モトコは阿川は三郎の本当の父親だと告白、三郎も知らないことだと話すが、三郎はそれを聞いてしまっていた。

 翌日朝食の時に三郎は阿川に腕相撲の勝負を挑む。しかも剣山を置き、負けた方が怪我をする状態で。勝負は三郎が負ける。しかし2人はお互いを称え合う。それを見ていた三郎の父親はそっと家を出て行く。皆で父親を止めに行き、三郎はその場でけい子と婚約をしたと言って父親を引き止める。

 

 裕次郎が主役のよくある恋愛ものだろうと思って観て驚かされた。現代では問題ないだろうが、60年前の映画でここまで性について会話がされる映画だったことに。

 金持ちのボンボンで、しかも本当の父親は今の父親とは別の男で、さらに思春期には性のはけ口の女性を分け与えられていた、とは。この映画の20年後30年後に作られた昼ドラのようなストーリーだ(笑

 さらにサブエピソードとして描かれるのは、安保闘争。知識としては知っているが、映画の中で闘争そのものがストーリーに絡めて語られたのは初めて観た。主役たちはもちろん、けいこの妹役の吉永小百合までが電話口でデモに参加する姉を応援している。それ以外にも、学生たちが政治について語り合う姿が何度か観られた。今のように政治について映画やドラマで語るのがタブーになったのは、いつからなんだろうか。

 前回「嵐を呼ぶ男」でも書いたが、芦川いづみさんは本当に綺麗だ。「嵐を〜」では脇役だったが、今回は裕次郎の相手役。女子大生らしい可愛さも十分だし、裕次郎の生き様に翻弄される様も上手かったと思う。

 しかしなかなか重いテーマも隠された映画だと思うが、底抜けに明るい主題歌で終わるラストは、いかにも昭和映画全盛期の終わり方だと感じる。

 

 

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  • 発売日: 2005/07/08
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