冬桜ノ雀 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●冬桜ノ雀 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第29作。季節は冬。鼠志野の茶碗を巡る高家瀬良家と神沼家の争い、能楽の丹五郎一味捕縛の策と丸目高継歌女登場、豊江丸での丹五郎一味捕縛と武左衛門の外泊、家基の悪夢と磐音おえいたちでの猪鍋、家基発病と丸目との戦い。

 今回の見所は、恒例となった(笑 笹塚の探索の手伝いにとうとう豊後関前藩の新造船豊江丸までが使われることになったのが、一つ目。丹五郎一味を誘き寄せるために、またも読売が使われるが、その内容に中居半蔵がヤキモキする。しかし事件が解決し真相を明かした読売が元となり、関前藩の商品が飛ぶように売れて、めでたしめでたしとなる。

 もう一つは、家基の身に危機が迫ること。5人の刺客とは別の、伝説の剣士丸目が歌女と登場、道場で歌女と、今作の最後で丸目と、それぞれ磐音は対決する。歌女は制圧するものの斬ることはせず。最後での丸目との戦いも、これまた例によってこのシリーズでたまに登場するファンタジーの世界での戦いであり、まだ決着は付いていない。この丸目との戦いは今後の目玉になりそうな予感。

 最後に蛇足な一つ。前作で武士を捨て門番として就職した武左衛門が早速その職を解かれそうな危ない橋を渡る〜豊江丸を使った丹五郎一味捕縛の策に武左衛門がつられてしまう。笹塚や磐音の口添えでなんとか元の鞘に収まるが、相変わらずヒヤヒヤとさせてくれる(笑