侘助ノ白 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

侘助ノ白 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第30作。季節は年末年始。利次郎土佐到着と父襲撃、槍折れ小田平助登場と道場餅搗き、金兵衛長屋の憑神幻々斎と水戸家屋敷での闘剣、利次郎土佐家騒動と平助道場門番に、土佐漆会所での戦いと田沼意知雇いの西国武芸者。

 恒例の年末年始の出来事だが、今作はこれまでと一味違い、旅先土佐での利次郎の活躍が半分を占める。

 土佐に着いた利次郎は、早速現地道場で5人抜きをやってみせる。本人も驚きの成長ぶりだが、磐音に言われていた稽古を続けてきた成果だと本人も自覚する。藩内の騒動〜豊後関前藩と同様、財政改革に反対し私腹を肥やす一派との戦いも。城下がりの利次郎の父が襲撃されるが、利次郎が見事に撃退、第5章では騒動を決着付ける対決も。

 江戸の様子も描かれるが、今作のポイントは、新キャラ小田平助だろう。槍折れという一風変わった武術の達人でありながら、ユーモアも併せ持つちょっと不思議な人物。まだその本当の実力を見せていないようだが、磐音との会話からその達人ぶりは間違いなさそう。九州弁を話すが、佐伯泰英さんの出身地ということもあり、その話し方に全く違和感はない。今後が楽しみなキャラである。

 今回はその他にも、金兵衛さんが風邪で寝込んだり、早苗が剣の修行を始めたり、霧子が磐音とともに今津屋に行き不良浪人たちをやっつけたり、と様々な見せ場があった。

 磐音自身があまり剣での対決をしなくなったが、その分弟子の利次郎が活躍する。正直磐音は絶対的エースであり、戦いに負けることはないと安心できる一方で、勝つのか負けるのかというハラハラ感がなかったのも事実。その点利次郎の戦いはひょっとしたら負けるのか、と思わせるところがあり、ハラハラできる。

 新しい楽しみ方ができるようになった、ということか(笑