紀伊ノ変 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

紀伊ノ変 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第36作。季節は秋。高野山光然と新宮藩榊原との出会い、光然の会談と磐音付添、品川柳次郎の仲人の件、雹田平の占いと刺客梅津与三郎とおつな、和歌山藩会談合意と梅津との戦い。

 前作で高野山の隠れ里に落ち着いた磐音のその後を描いた1冊。姥捨の郷の丹が江戸から狙われることとなり、それは隠れ里が見つかることを意味した。そのため雑賀衆たちはそれを防ごうと動く。その結果磐音は高野山の光然と知り合い、仲介役の彼を警護することになる。また偶然榊原とも知り合い、これが後に大きく影響する。この和歌山藩内の調整が本作の中心の話。

 また田沼意次の配下で磐音を狙う雹田平も動く。彼の占い能力が微かながら磐音を捉え、その結果雹の手下が高野山に。刺客梅津の焦りから磐音と対決。磐音は梅津たちを倒し、雹への連絡は途絶えることとなる。

 江戸では、磐音からの手紙を無事手にした品川が、お有との結婚の仲人をするはずだった磐音からの断りと今津屋由蔵の計らいで、国瑞桜子夫婦を仲人とし結婚をすることになる。

 和歌山周辺は正直土地勘が全くないので、地名が出てきても今ひとつピンと来なかった。前作では尾張紀州の歴史的なものも含めた争い話だったが、本作では和歌山藩内にも、親田沼派と反田沼派がいることが描かれる。なるほどなぁと思うし、この辺りが田沼一派の天下もそう長くないことを予感させる。

 しかし刺客や雹の手下を倒したとはいえ、高野山に目をつけられることは間違いない。次作以降で磐音はまた旅に出るのだろうか。