一矢ノ秋 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●一矢ノ秋 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第37作。季節は前作から1年後の約1年間。江戸の仲間へ磐音の近況知らせと尚武館取り壊し、姥捨の郷入口での敵撃退、お有岩田帯祝いと辰平利次郎江戸尾張へ、雹一派との戦いの準備、おすな女人禁制の高野山へと雹田平との戦い。

 この磐音シリーズ最大の特徴の一つでもあるが、1冊で一つの季節が進む。ところが本作ではいきなり前作終了から1年後の場面からスタート。しかも1章ごとに一つの季節が進んでいき、結果的に本作巻末時では前作終わりから約2年が経過していることになる。

 これは磐音とおこんの息子空也の成長を待ったことが大きいのだろう。前々作から姥捨の郷での暮らしが続いているが、田沼一派の追っ手は相変わらず。生まれたばかりの赤ちゃんを連れ田沼一派との戦いはできないために、空也を成長させる必要があったのだろう。さらに、いつまでも隠れ里にいたのでは話が進まないし(笑

 最終章で隠れ里の雑賀衆と雹一派の全面対決となる。江戸へ手紙を持って一旦戻った辰平が平助を連れて隠れ里に帰ってくる。平助も全面対決に手を貸すことになる。このために辰平、利次郎が隠れ里に来たのかとも思わせる。

 隠れ里以外では、尚武館の取り壊し現場に行った品川柳次郎が田沼一派に襲われそうになるが、そこへ現れる平助。またまたカッコ良い。

 蛇足。前作でも登場していたが、山中で雹一派と戦う霧子がブーメランのような武器を用いて活躍する。磐音シリーズとは全く関係ないが、先日観た「おしゃれ泥棒」でもブーメランを使っていた。こんな短期間にブーメランを用いた作品を2つも見ることになるなんて。ブーメランなんて「俺たちは天使だ」の沖雅也ぶり(笑