死の追跡

●308 死の追跡 1973

 サンタローザの街で銀行強盗が発生する。この街の住民は協力し強盗たちを追い詰める。この街の保安官キルパトリックは銃を持たず、皆にも撃たせないことで有名だった。強盗たちを捕まえ、最後の一人も追い詰めるが、その一人ブランドは学校に立てこもり、キルパトリックの息子ケビンを人質に、仲間の解放を求める。キルパトリックは仕方なく住民たちに銃を放棄させ、ブランドたちを逃す。ブランドは、ケビンを人質として街を出るまで連れて行くと宣言、馬で逃げて行く。それをキルパトリックの妻キャサリンが追いかけるが、ブランドに射殺される。ケビンも放り出され、馬に踏み殺されてしまう。

 キルパトリックは妻と子の仇を取るために強盗たちを追いかけ、メキシコに入って行く。キルパトリックは、強盗たちに追いつく。1人逃げ遅れたスクールボーイを捕らえナイフで刺し殺す。残りの3人は逃げて行く。

 キルパトリックは丘に登り、3人の姿を見つける。ライフルで撃とうとした際に、メキシコの判事グティエレスに止められる。そして自分たちの仕事は逮捕することであり、処刑ではないと言われる。彼にブランドを捕まえたら手紙で知らせると言われ、キルパトリックは引こうとするが、隙を見せたグティエレスを殴り、3人の跡を追う。

 3人は老夫婦の住居に侵入して食べ物を漁っていた。その時キルパトリックが追いかけて来るのを見つける。

 キルパトリックは街に着くが、水辺で顔を洗っている時に住民たちに取り押さえられる。そこにブランドが現れ、老夫婦を殺したのはこの男だと話す。3人が侵入した家の老夫婦が殺されていた。キルパトリックは住民の手により、絞首刑にされそうになる。

 そこへグティエレスが助けに入り、キルパトリックを牢に入れる。

 3人組は別の街にたどり着いていた。馬の蹄鉄を修理してもらっていたが、そこでグティエレスがやって来るのを見つける。彼らは住民たちを脅し、グティエレスを追い返そうとするが、一人の住民が犯人たちに目潰しをし、撃ち合いになる。そして強盗の一人チューチューを捕まえるが、残りの2人は逃げてしまう。

 牢に入れられていたキルパトリックは別の牢に来ていた神父を人質にし牢から脱獄、強盗たちを追い始める。

 グティエレスはチューチューを住民に護送させ、自分はブランドたちを追うが、待ち伏せされ銃撃され、崖から転落してしまう。

 キルパトリックはチューチューが護送していた住民を殺し逃亡する現場に追いつく。廃墟で撃ち合いとなり、チューチューは底なし沼にはまってしまう。キルパトリックはチューチューからブランドはサンホセにいる女に会いに行くと聞く。チューチューは沼に飲み込まれて行く。

 サンホセに向かうキルパトリックはグティエレスを見つけ助ける。そして2人でサンホセに行く。キルパトリックは酒場で強盗の一人ジェイコブを見つけ射殺する。そしてブランドの女から、彼が娘に会いに修道院に行ったことを聞き出す。キルパトリックは酒場を出ようとするが、客の一人が彼に銃を撃つ。ケガこそしなかったが、それが原因でキルパトリックは目が見えなくなってしまう。

 キルパトリック、グティエレス、ブランドの女マリアの3人は修道院に向かう。修道院のそばまで来た時、キルパトリックは目が見えるようになる。彼は銃を奪い、グティエレスを殴り気絶させ、一人修道院に向かう。

 修道院の中で、キルパトリックとブランドは撃ち合いになる。キルパトリックはブランドの娘を人質にし、彼をおびき出す。しかし彼を射殺せず、街へ連れ帰って来る。キルパトリックはグティエレスにブランドを引き渡そうとするが、グティエレスは証人が死んでしまったため、ブランドは無罪となると話す。ブランドは喜び、酒を飲みたいと話し始める。キルパトリックはブランドを撃ち殺し、そして去っていこうとする。グティエレスは止まらなければ撃つ、と宣言するが、彼は止まらない。グティエレスは彼に向けて銃を放つ。

 

 色々な面で変わった作品だった。

 映画冒頭は静止画のつなぎで話が進む。まるで紙芝居(笑 映画途中でも静止画が何度か使われたような。また主人公キルパトリックが途中で目が見えなくなるが、その際の彼から見た視点のシーンもちょっと独特な感じ。さらに、主人公は銃を撃たないことで街を守って来た保安官という設定も斬新だった。

 映画のテーマは、仇を討つために犯人を追う主人公と、法を守ろうとするもう一人の保安官。もともと銃を持たない主義だった主人公が、復讐のため銃を手にしてしまうが、それを法で犯人を裁こうとする保安官が止める、まさにここにあるのだろう。

 主人公の主義が一貫してないじゃないか、とも思うが、愛するものを殺された人間ならば当然だとも思える。しかし法律との兼ね合いはどうするのさ、ということなんだろう。

 映画ではラスト、犯人を追いつめた主人公が犯人を殺さず、もう一人の保安官の前まで連れて来る。しかし法律で裁くことができないとわかり、主人公は法を犯し犯人を射殺する。一度は信念を取り戻したように見えるが、犯人が裁かれないとわかり、法を犯してでも犯人を殺す主人公の気持ちは十分にわかる。そして法を守るために、もう一人の保安官が主人公を射殺するのも…。

 この時期の西部劇は一筋縄ではいかないストーリーが多い。ニューシネマ全盛の時代の1本だから、このラストなんだろうなぁ。