東雲ノ空 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●東雲ノ空 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第38作。季節は秋。磐音一行江戸へと小梅道場、小梅村での皆との再会と霧子重富家訪問、弥助と御庭番甲賀臑八、帰着後の挨拶回り、谷戸の淵と速水復職への策略。

 とうとう3年半ぶり?に磐音が江戸に帰って来た。江戸の仲間たちとの再会、初孫空也と会う金兵衛。感動的な場面が目白押し。

 一方で江戸に戻ったということで、磐音は正々堂々と今津屋の小梅村の寮に住むことで常時監視の目が光ることになる。そこには田沼からの刺客が次々と現れる。

 意外な見せ場は多摩川越えをする磐音一行が人の入れ替わりで田沼一派の目をごまかす場面か。この場面からこの1冊はスタートするが、読者もちょっと騙される。

 他にも利次郎が霧子を自分の家に連れていく場面での磐音からの恋の指導が入ったり、利次郎だけでなく辰平にも恋の話があったり、旧尚武館で絡んで来た田沼の配下におこんが啖呵を切ったり、弥助の苗字松浦を磐音が初めて知ったり、と見せ場も豊富。さすがに満を辞して江戸に戻って来ただけのことはある。

 速水についても磐音があちらこちらに手を廻して江戸に戻ることになりそう。そう言えば笹塚も何気に復職していたし。反撃体制が整ってきそうな感じ。江戸に戻った磐音の次の一手は何か。楽しみ。