慕情

●310 慕情 1955

 1949年香港。ハン・スーインは病院に研修医として勤務していた。彼女はイギリス人と中国人のハーフだった。忙しい仕事の最中、上司から病院理事の妻パーマージョーンズ夫人のパーティに気晴らしに参加するように言われる。そのパーティでマークと知り合い、食事に誘われる。帰り道、スーインは上司からマークは妻帯者であることを知らされる。

 スーインはマークと食事に行き、夫が戦死したことを告げ、あなたと恋することはないと話す。別れ際マークはまた水曜に電話すると言って別れる。水曜日マークは仕事が出来たと言い謝罪する。スーインは上司に言われた買い物をしに街に出る。そこで助学生時代の友人スザンヌと出会う。彼女もハーフだったが、今はそれを隠し妻帯者のイギリス人と付き合っていた。

 病院にマークが訪ねてくる。マークは妻との離婚話のためシンガポールに行っていた。二人は泳ぎに行く。そこでスーインの友人ノラの家を訪ねる。その帰り、海岸で着替えをする際、スーインはマークの愛を受け入れる決意をする。二人は別れ際明日も会う約束をし、病院裏の丘の上の木の麓で会うことにする。

 スーインは叔父からの知らせで重慶に帰ることにする。妹に何かあったようだとマークに話す。マークは反対するが、スーインはマークとも会わない期間を作るためにも、と話し出し、二人は口論になってしまい、マークは怒って帰ってしまう。

 スーインは重慶の叔父の家に行く。妹が外国人と暮らし始めたことを叔父一家が非難していた。スーインは妹と話し合う。妹は中国本土の共産党を恐れており、外国人と逃げるつもりだった。スーインは妹のためにパスポートを取ることを約束する。その夜、スーインは叔父に呼ばれる。叔父の家にマークが来ていた。

 マークと二人きりで話したスーインはマークのプロポーズを受け入れ、叔父に許しを求める。スーインの親も同じだったと叔父は許しを与える。

 二人は香港に帰るがマークはその足でシンガポールに妻との離婚を成立させに行く。友人ノラの家にいたスーインに離婚が成立したと知らせが入る。スーインはマークを迎えに空港まで行くが、マークは冴えない顔をしていた。妻が土壇場で離婚を認めなくなったためだった。

 マークは仕事でマカオに行くことに。会えないことを寂しがるマークはスーインにもマカオに旅行に来るように誘う。スーインは同意するが、旅行当日理事夫人に呼ばれ、二人のことが噂になっていると言われる。それでもスーインはマカオに向かう。

 二人は食事をし、占い師に将来を占ってもらう。ホテルに戻ると、マークに朝鮮戦争が始まったとの連絡が入っており、彼はすぐに行くことに。

 スーインは病院に戻るが、彼女の研修期間が更新されないこと、つまりクビになることが知らされる。マークから連絡があり、朝鮮に行く前に会いたいと言われ、丘の上で会うことに。

 病院をクビになったスーインは孤児となった患者オーノーを連れ友人ノラ宅で住む。そこでマークと手紙のやりとりをすることに。

 ある日マークからの手紙を喜んで読んでいるところへ、友人アンがやって来る。彼女は新聞にマークが戦死したことが掲載されているのを知らせにやって来たのだった。彼女は悲しみ丘の上に向かう。

 

 子供の頃に観てすごく感動したのを覚えていた。それ以来ぶりの鑑賞だと思う。確かに今回も感動したが、子供の時に感じた感動には及ばなかったようだ。

 あまりに有名なテーマ曲。この映画を観たことがない人でもこの曲を聞いたことのない人はいないだろう。

 今回観てわかったが、あまりにおしゃれなセリフの数々。マークとスーインの会話は大人の愛をおしゃれな会話で観せている。

 そしてラストの悲劇。出自で悩み人から色々と言われ、勤め先はクビになり、不幸ばかりが押し寄せて来ていた主人公の元に届く悲報。遠い場所にいる恋人との手紙のやりとりの最中に相手が亡くなってしまうというパターンを、その後武者小路実篤の小説で読んだから、今回の感動が薄れたのかも。

 それともヒロインが中国人とのハーフっぽく見え、アメリカ映画っぽくなく日本人に近く感じたのが子供の頃感動した理由なのか。

 子供の頃観た随分と後に、あの丘が金持ちに買われてしまったというニュースを見た記憶があるが、今はどうなっているんだろう。

 しかしこの頃の漢字二文字タイトルの映画にハズレはない。これは間違いない。