秋思ノ人 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●秋思ノ人 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第39作。季節は冬。速水甲府出立、速水中間捻挫と磐音速水兄弟速水出迎えへ、速水江戸帰着、おすな弟五十次と鶴吉の三味線、五十次読売へと速水襲撃。

 前作磐音の策略で甲府から江戸に戻れることになった速水の道中がメイン。案の定や田沼一派の追っ手が速水一行を襲うが、磐音たちがそれを守る。しかし磐音が同行を命じたのは辰平利次郎コンビではなく、速水兄弟。父を守護するため、二人が活躍を見せる。

 サブとなる話は、鶴吉がおすなに作った三味線が鶴吉の元へ戻ってくる話。ただし一筋縄では行かない話で、おすなの無法者の弟がそれを鶴吉の元へ持ち込む。それを訝しんだ磐音たちは弟五十次を見張り始めるが、五十次は読売と手を組むことになる。

 以前にもあったが、田沼一派との戦いに読売は欠かせないものらしい。確かに世間を味方につけるためには持ってこいのもの。

 1冊を通じ、江戸へ戻る道中や戻ってからの速水が何度も襲われるが、磐音と仲間たちが見事に撃退する。

 前作で江戸に戻り落ち着いた磐音が田沼を相手にどう動き始めるか、と期待したが、本作は速水の江戸迎え入れで1冊終わってしまった。次作に期待。