春霞ノ乱 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●春霞ノ乱 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第40作。季節は春。正睦と照埜江戸へ、正睦勾引かし、正睦探索、正睦勾引かしの犯人、旧尚武館からの正睦救出。

 前々作で江戸に戻った磐音、前作では速水の甲府からの戻りを手助けし、本作でいよいよ田沼一派との戦いが始まる、かと思いきや、話は豊後関前藩の騒動に磐音が巻き込まれるところから始まる。

 そして意外にも磐音の両親正睦と照埜が予告なしに江戸に現れる。磐音とおこんの子空也と会うため、ではなく、藩の騒動の原因を究明するためだった。さらに正睦は江戸に来た翌日に勾引かしにあってしまう。本作は正睦奪還のために、磐音とその仲間たちが奮闘する。

 本作が面白いのは、これまで磐音シリーズではあまり見られなかったミステリー仕立てとなっている所か。正睦が誘拐拉致された先が最初は全くわからない。犯行の理由から、犯人はなんとなく目星がつくが、それにしては拉致している場所がわからず、暗澹とした状態で話は進む。

 田沼一派との戦いはまた持ち越しかと思いきや、関前藩の騒動も正睦勾引かしも田沼一派が絡んでいた、とだんだんとわかってくる。意外なところで、田沼一派が関前藩に関係してきていたこと、藩主実高の妻お代の方も騒動に関係していることが判明していく。

 しかし豊後関前藩、何度同じ過ちを繰り返すのか(笑

 そう言えば、磐音とおこんに二人目の子供、娘の睦月が誕生している。救出された正睦や照埜が二人の孫と会う場面がなんとも言えず良い。佐々木玲圓やおえいに会わせることができなかった分の償いにも思える。

 江戸に戻った磐音が田沼一派と直接戦い始めると思っていたが、前作本作と、磐音の周りの人間を田沼一派から守るところから話が進むようだ。