徒然ノ冬 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●徒然ノ冬 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第43作。季節は冬から新春。霧子道場へ戻ると修太郎天神髭見学、霧子見舞客東西対抗戦と奈緒夫死去、霧子の目覚めとお杏江戸訪問、修太郎弟子入り志願と実高からの俸給、佐野善左衛門暗殺計画と奈緒からの手紙。

 前作終わりで負傷した霧子が目覚めるまでが前半部のメイン。仲間たちの思い、特に利次郎は気がきではない。そんな中、磐音が霧子のために願掛けをし、さらに秘伝を披露し霧子を目覚めさせる。

 霧子の目覚めに伴い、利次郎と霧子の仲は親にも公認される中に。もう一人の門弟辰平にも福岡からお杏が江戸に来春にも訪れて来るという知らせが入る。これまた前作で騒動となったさらに武左衛門の息子修太郎が、やっと自らが進む道を天神髭の弟子と定める。

 磐音シリーズの魅力の一つが、小説の中でも年月が進むことだが、本作でもそれに伴い、若者たちがしっかりと成長して行く様が描かれる。

 年末年始の話ということで、磐音は豊後関前藩を訪れるが、その際に実高から俸給500両を授かり、このお金で道場の改築に着手する。小梅村の道場も以前の道場に負けないような作りになっていきそう。

 一方でシリーズメインの話にも進展。例の田沼への恨みを持っている佐野善左衛門が田沼により昇進加増を申し渡されるが、これが暗殺計画の一環だと弥助の調べで判明する。また、田沼息子に伴い相良へ行くことになった土子順桂吉成のことを磐音は生涯最強の相手だと認識する。

 さらに奈緒からの手紙が磐音の元に初めて届くというエピソードも。

 前作まで続いた田沼一派からの刺客、の話も本作では特に描かれず、どちらかというと平和な、そして様々な将来が見えて来た一作となった。シリーズも最後の直線に入った感じ。