失意ノ方 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●失意ノ方 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第47作。季節は春から夏。弥助藪之助供養と土子順桂道場へ、北尾重政道場居候と霧子山形へ、卜部忠道ひな道場へ、卜部忠道ひなとの戦い、田沼意次との対面と北尾重政の尚武館夏景色六態。

 

 前作で田沼意知が斃れ、磐音が翻意し、シリーズの流れが変わった。さてどうなるのか、と注目の本作だったが。

 意知が襲撃された日に城内に潜んでいた弥助が、仕方なく倒した元の仲間藪之助の供養に旅立つ。そして弥助はそのまま山形に向かう。それを知った霧子も山形へ。店が潰れ借金取りに追われている奈緒を助けるために。

 中盤から後半でのメインは道場での話。久しぶりに登場した北尾重政が悪漢たちから逃れるために道場に居候を始める。道場の風景を眺めていた重政は巻末で尚武館夏景色六態なる絵を描きあげる。道場にいる女性たちがモデルである。

 もう一つの道場話は、卜部忠道と孫娘ひながひなの婿探しと称し道場破りにやってくる。一陣は追い返したものの、再度訪れた二人を磐音が倒す。

 最後は、意知の墓参りをした磐音が意次と対面する。二人が直に対面するのはシリーズの中で初めてか。短いながら言葉も交わす。意次は最後まで戦う意思を見せる。

 

 磐音の翻意でどうなるかと思って注目して読んだが、やはり少し肩透かしを喰った感じがする。磐音が生涯最大の敵と考えている土子順桂が道場に現れたり、意次と初めて対面したり、とまだまだ戦いが続いていくことが描かれるのは当然だしよくわかる。

 しかし、卜部忠道と孫娘ひなは何者だったのか(笑 登場した意味がよくわからない。田沼一派とも関係ないとのことだし。うーん、謎。

 一方で重政の尚武館夏景色六態の絵や奈緒が最後に山形藩の参勤交代に紛れて江戸にやってくるのは、ラストに向けた話としてわかるし、ホッとさせられる。

 失礼な言い方だが、佐伯さん50巻での終わりを目指しているとインタビューなどで言ってきているので、本作はちょっと無理無理のばした感があるような気がする(笑

 次作に期待。