白鶴ノ紅 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●白鶴ノ紅 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第48作。季節は夏から年明けまで。田丸輝信無断外出、最上紅前田屋店開き、秋世の奉公と家治死去、意次老中罷免と磐音鎌倉へ、お代の方江戸へ。

 前作に引き続き、意知亡き後の田沼意次の様子が描かれつつも、磐音の周りの人々について話が進んでいく。その中には意外な人物。

 一人目輝信。辰平と利次郎が去った道場でのひと騒動。二人と同時期に入門した輝信が自身の生き方に疑問を持ち無断外出外泊をする。同じ嫡男ではない同士の兄と久しぶりに会い会話することでまた道場に戻る決心をする。そして早苗との恋。

 二人目奈緒。江戸に出てきた奈緒がこれまでの経験知識を活かし紅屋を開く。吉原との関係もありこれが大当たり。奈緒の江戸での生活が安泰となる一方で、磐音たちとの交流も日常的なものになる。

 三人目秋世。これまでも名前は上がっていたが、登場人物として動き始めたのはここが初めてだと思われる武左衛門の次女秋世。奈緒の店開きを手伝い、結果的にそのまま店に奉公することに。武左衛門の4人の子供たちはここ数作で次々と奉公に出ることになり、武左衛門が寂しがることに。

 四人目お代の方。鎌倉の寺で尼となっていたお代の方。3年が過ぎ磐音たちが迎えにいくことになる。ここで奈緒の店の紅が藩主実高からの贈り物として使用される。

 

 意次からの刺客は相変わらず磐音たちを襲うが、流れ者の浪人クラスで歯ごたえはない。そしてとうとう家治が死去し、意次は老中を罷免され、屋敷も奪われる。それでも意次の力は完全に削がれることはなく、まだまだ戦いの終わりではない。ただ意次の狙いが松平定信にも向けられ始めている。

 本作でも著者によるあとがきがあるが、やはりシリーズの結末をどうするのかを悩んでいるとの言葉がある。前作でも書いたが、田沼意知死去の後、シリーズが停滞している感が否めない。田丸輝信や秋世、もっと言えば奈緒の江戸の店の話も本当に必要だっただろうか。シリーズのファンとしては奈緒の登場は嬉しいし、奈緒が普通に磐音たちと会話している姿も喜ばしいが、望んでいたのはこんな場面だったか?別に磐音との恋が再燃して欲しいとは思わないが(笑 なんか違うような気がするなぁ。

 シリーズも残り3冊。どこに向けて話は進んでいくんだろう。