磐音シリーズスピンオフ3作目。
「初午祝言」
品川柳次郎とお有との祝言の日を描く。
「幻の夏」
後に縫箔屋に奉公することになるおそめが幼い頃妹の出産のために母親に付き添い母の田舎の漁村に出向く。そこでおそめは初めて絵を描くことになる。
「不思議井戸」
南町奉行所同心笹塚孫一の若き頃の話。父中右衛門が牢で身罷り、その事実解明に仲間とともに乗り出す。
「用心棒と娘掏摸」
後に磐音の道場に居座ることになる向田源兵衛の若い頃の話。江戸に向かう源兵衛は金がなく道場破りで金を稼ごうとする。それを見ていた娘掏摸あかねと旅をともにすることになり、娘の親の仇討ちに加勢することに。
「半日弟子」
鵜飼百助と知り合った磐音は、百助の頼みで半日だけの弟子となり、百助が研いだ刀を納めに行くことに。しかしそのうち一軒は悪評高い旗本の家だった。そこで磐音は妖刀村正と出会うことに。
スピンオフも3作目となる。前作「武士の賦」はパスティーシュを読んでいるような感じだったが、本作は一話一話が良くできていると思う。
「幻の夏」「不思議井戸」おそめ、笹塚の幼い頃、若い頃が描かれ、後の彼らの礎が築かれたと思われるエピソードが描かれ、読み応えも十分。
「用心棒と娘掏摸」は本編では脇役だった向田源兵衛が殴られ屋となるきっかけが描かれる一方、源兵衛が確かな腕を持つ剣術家であることも示される。
「半日弟子」は磐音が活躍する話。スピンオフでもやはり磐音はその剣術を見せないといけないのか(笑
「初午祝言」だけはちょっとアレっ?と思ってしまった。この話、エピソードは本編で読まなかったっけ?という話がちらほら。最後の武左衛門の粋な計らいは確かに本編にはなかったが。
しかし本編終了から3年が経っても、これだけのスピンオフエピソードを書けるのはさすが、としか言いようがない。やはり51作も続いた人気シリーズだったことを再認識させられる。