男はつらいよ 50年をたどる。 都築政昭

男はつらいよ 50年をたどる。 都築政昭

 「男はつらいよ」50作目を記念して刊行された一冊らしい。ただし「寅さんの風景〜山田洋次の世界」を加筆修正したもの。

 3部構成。「寅さんの風景」「男はつらいよ 秀作篇」「山田洋次の風景」の3章からなる。山田洋次監督の言葉などを多数引用しながら、男はつらいよについて分析している。

 「寅さんの風景」では、男はつらいよが製作された過程、山田洋次監督の編み出した設定の巧みさ、などについて触れている。「男は〜」の関連本は数多く読んだが、文章化されるとその設定の上手さを改めて知ることとなる。「(おいちゃん、おばちゃん、寅さん、さくらの)4人には一親等関係は一人もなく…」確かにその通りだが、映画を観ているときにそれを感じることはあまりない。

 「男はつらいよ 秀作篇」では渥美清さん生前に作られた48作の中からテーマを絞って秀作をあげ、そのポイントについて論じている。どれも傑作揃いであるが、特に32作「口笛を吹く寅次郎」について、博の兄弟喧嘩については、これまた映画をぼうっと観ていては気づかないことに触れていて驚いた。

 「山田洋次の風景」では監督の幼少期からの歴史について語り、それがどのように「男は〜」に影響したかを論じている。これまでもインタビューなどで部分部分について聞いたり読んだりしたことはあったが、ここまで監督の幼少期から青年期までの詳細を読んだのは初めて。「家族」をテーマにしている理由がよくわかる。

 来月にはNHKで50作が放送されるらしい。頭の中が、ちょっと「男はつらいよ」モードに入って来た感じ(笑