追憶

●345 追憶 1973

 ラジオ局で働くケイティは上司と酒場を訪れる。そこで大学時代の友人ハベルに出会う。

 大学時代、学生運動を主体的に行なっていたケイティ、彼女の演説を聞いてハベルは彼女に興味を持つ。二人は授業で同じ創作クラスだった。ケイティは自分が書いた短編小説に自信を持っていたが、教授が選んだのはハベルの作品だった。その夜、酒を飲んでいたハベルは通りかかったケイティに声をかけ、一緒に酒を飲む。彼の本は売れることが決まったのだ。そして大学卒業のダンスパーティで二人は一緒にダンスを踊った。

 酒場でハベルと出会ったケイティは家に彼を誘い、酒に酔ったハベルと一夜を共にする。翌朝足早に部屋から出て行こうとする彼にケイティは電話番号を渡す。後日ハベルは電話をして来る。ケイティは喜び彼のために料理を用意する。そして彼に新しい本を書くように勧める。

 ハベルは友人たちのパーティにケイティを連れていくが、ケイティは呑気な友人たちの会話についていけなかった。ハベルは新しい小説を書き始める。二人はまた友人のパーティに参加するが、ケイティはそこで友人たちの会話に噛み付いてしまう。ハベルは止めるが彼女はいうことを聞かなかった。彼女はパーティから帰ってしまう。ハベルが彼女の仕事場に来て別れを告げ去っていく。しかし彼女はハベルに電話をし友人として付き合ってほしいと謝罪、二人はよりを戻し、結婚することに。

 ハベルの小説がハリウッドに売れ始める。そして映画人たちとの付き合いが始まる。しかし世の中では赤狩りが始まっていた。そんな時ケイティは妊娠する。友人たちのパーティに出かけるとそこに盗聴器が仕掛けられていた。ケイティはハベルの反対を押し切り、ニューヨークへ抗議活動に出向く。ハベルは大学時代の女友達と浮気をしてしまい、ケイティに知られることに。二人は会話をし別れを決意するが、ケイティは子供が生まれるまでは一緒にいて欲しいと頼む。

 その後しばらくして二人は再会する。二人ともに再婚していた。ケイティは二人に家に遊びに来てと話すが、ハベルはそれはできないと断る。そして二人は別れる。

 

 映画のテーマ曲が昔コーヒーのCMで使われていて、そのCMを休みの日によく見た記憶がある。とても優雅なイメージのCMで気に入っていた。曲のタイトルも映画のタイトルも原題は「The Way We Were」、これを「追憶」と訳したセンスに脱帽する。映画そのものは今回初めて観た。

 よくある恋愛もののような形を取っているが、二人の主義主張の相違と恋愛が成立するか、というのがポイント。女性が政治的主義を強く持っており、それが原因で男とぶつかる、というのは映画ではあまり観たことがない。しかも途中赤狩りまでが描かれる。1973年でもう赤狩りが過去のものになりつつある時期だから出来たんだろうけど。

 映画としては、特に「ロープ」を観た次の日だから余計に感じるのだろうけど、カット割りを多用していて、それが時の経過をうまく表現している。ただ途中どれだけ時間が経ったんだよ、と思う箇所もあったが(笑

 恋愛ものだが、結果的に二人は別れることになり、しかもラストシーンで偶然再会し会話をする。その時のケイティの表情が素晴らしく、人生のほろ苦さを感じさせてくれる。テーマ曲の良さに引かれ、若い時に観なくて良かった(笑 若い時に観てもこの映画の良さは全く理解できなかったろうから。